9月は台風が襲来しやすいシーズンです。台風は発達した積乱雲の集合体で、近づくと大雨や暴風をもたらします。台風の通り道である日本では、毎年のように台風の影響によって大きな被害を受けてきています。落ち着いて考えられる安全なうちに時間をとって、家族で事前に備えをしておきましょう。近年の台風から学ぶべきことをまとめました。
【台風14号の最新情報】
台風14号は東シナ海でしばらく停滞した後、18日(土)には日本海で温帯低気圧に変わる見込みです。次第に勢力は弱まるものの油断はできません。湿った空気の影響で、西日本では17日(金)頃にかけて大雨に注意が必要です。
新平年値 秋台風の接近・上陸はやや増加傾向
気象情報でよく使用する「平年値」は、今年5月から統計期間(1991年〜2020年)の新しい「平年値」の使用が開始されています。平年値は過去30年間の観測値を平均したもので、10年ごとに更新されます。今回は2011年以来、10年ぶりの更新となりました。去年まで使用していた旧平年値(1981年~2010年)と新平年値(1991年~2020年)を比較すると、年間の台風発生数は全国で25.1個とやや減ったものの、接近数は11.7個、上陸数は3個とやや増えました。
新平年値の8月、9月、10月の発生数、接近数、上陸数を表にまとめてみました。旧平年値では1年の中で、台風の上陸数が最も多かった月は8月でしたが、新平年値では9月の上陸数が最も多くなりました。9月は接近数3.3個、上陸数1個、10月は接近数1.7個、上陸数が0.3個となり、旧平年値と比べて+0.1~0.4個程度ですが、やや増えました。秋に入ってからの台風上陸はやや増加傾向にあることがデータから分かります。
≪参考資料≫ 気象庁 報道発表資料
9月はもちろん、10月に入っても台風に油断できず、むしろ警戒が必要です。台風が発生している時は気象情報に気を付けて、万全な対策をとってください。
統計開始以来最大の水害被害額となった「令和元年東日本台風」
台風などの気象災害が発生するとどれぐらいの影響があったのか、色々な視点から見ることができます。大規模な気象災害は毎年のように発生していますが、その規模を知る一つとしてここでは被害額を挙げてみたいと思います。台風による水害被害額について調べてみたところ、近年では伊豆半島に上陸し、関東地方を北上した令和元年東日本台風(台風19号)が最も大きく約1兆8,800億円となり、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)による被害額(約1兆2150億円)を上回り、統計開始以来最大の被害額となりました。
≪参考資料≫ 国土交通省 報道発表資料(※水害とは洪水、内水、高潮、津波、土石流、地すべり等でここでは津波を除く。)
この台風は10月12日に伊豆半島に上陸した台風で、10月中旬という時期に猛威を振るっています。一時は「大型」で「猛烈な」勢力にまで発達し、「非常に強い」勢力を保ちながら日本に近づきました。(※伊豆半島に上陸時は「大型」で「強い」勢力でした。)このため、台風の接近前から多量の湿った空気が流れ込んで、1都12県に大雨特別警報が発表されるという異例の事態となり、東海から東北にかけて広範囲に記録的な大雨をもたらしました。大型で発達した台風の接近とともに台風北側の前線が強化され、降雨が強まりました。
新潟県及び長野県を流れる信濃川水系千曲川や、福島県及び茨城県を流れる久慈川においては河川の計画規模を超える大雨となり、福島県及び宮城県を流れる阿武隈川や、鳴瀬川水系吉田川、利根川なども計画規模に匹敵する大雨となりました。その結果、複数の第一級河川が決壊するなど関東・東北地方を中心に142か所で堤防が決壊し、20都県にわたり950件を超える土砂災害が発生するなど、甚大な被害を受けました。
台風が襲来すると、土砂災害や、浸水害、落雷や竜巻など、様々な形で今までの日常の暮らしが激変してしまうことがあります。いざ災害に遭ってしまった際に備えるという意味で確認しておきたいのが加入している保険です。台風で災害に遭った場合など、状況によっては自分が加入している保険会社から保険金がおりることがあります。主に「火災保険」の中には自然災害でも様々な補償が含まれています。特に土砂災害や浸水害の危険なエリアにお住まいの方ほど、この機会に確認しておくことは自分の生活を守る1つの方法だと思います。
次々と「過去最強クラス」で迫る台風
台風は大型であるほど広範囲に影響を及ぼす恐れが高く、発達しているほど暴風が吹き荒れるなど荒れた天気をもたらします。先に述べた令和元年東日本台風が接近する1か月ほど前の9月、もう1つ関東に襲来したのが、台風15号です。(令和元年房総半島台風と命名)令和元年房総半島台風は、三浦半島付近を通過し、「強い」勢力で千葉市付近に上陸しました。
関東地方南部や伊豆諸島を中心に暴風、大雨に見舞われ、特に台風が通過した千葉県の各地で観測史上最も強い風が吹き荒れ、鉄塔や電柱が倒れて大規模な停電が発生するなどの影響が出ました。≪参考資料≫ 気象庁 災害をもたらした気象事例
上陸時の気圧は960hPaで、関東に接近・上陸した台風としては「過去最強クラス」と呼ばれていました。
その1か月後に接近上陸した令和元年東日本台風は、日本に近づく前に915hPaまで下がり、上陸直前の気圧は955hPaでした。日本付近の海面水温が高くなっていたため、「大型」かつ台風の勢力が衰えないまま「強い」勢力で上陸し、大きな被害を及ぼしています。
先日、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、最新の研究成果に基づく地球温暖化の現状や予測を示す「第六次評価報告書」で、「地球温暖化は人間活動のせいである。」とはっきり断言しました。ますます地球温暖化が進んで海の温度も上昇すると、暖かい水蒸気をエネルギー源としている台風はより強くなり、これまでにない強さの台風が接近・上陸するリスクが増大すると考えておかしくありません。台風が発生してから接近する前までの備えるべき時間が限られることもあり、とっさの避難が必要になることもあるかもしれません。
災害が目の前に迫ってきてから行動する
かなりの危機感や恐怖心に煽られて、ようやく逃げる
というのでは遅いのです。そうならないために、自分や大切な人の命を守るためには、警戒心を持って、早めに適切な行動をとることが必要です。防災月間である今、避難するタイミングや場所について、ぜひ再確認してほしいと思います。