2月に入り、各地で梅の便りが届くころになりましたが、北国ではまだまだ冬本番。雪と氷にまつわる自然現象を、あちこちで見ることができます。その中のひとつが「雪まくり」。今回は、広い雪原の上を雪の塊が風で転がって、まるでロールケーキのように見える不思議な現象「雪まくり」をご紹介します。
強い風で雪が転がり、ロール状になる「雪まくり」。雪国の自然現象
広い雪原に、雪の表面を巻き込んでロール状に転がっている塊を見かけたことはありませんか。これは、「雪まくり」とよばれる自然現象で、地方によっては「雪俵」や「俵雪」ともよばれます。
雪だるまを作るときは、形を球状にしなければならないので、全方向に雪が巻きつくように、雪玉をいろいろな角度に向けて転がします。
しかし、ロールケーキのような「雪まくり」は、ある程度の幅の雪の塊に、同じ厚さで同じ方向に、雪がふんわりと巻きついてできたものです。珍しい自然現象で、人の手によって作るのは、とても難しい形です。
雪質と風力がポイント。やや粘り気のある雪、風は強すぎず弱すぎず
雪まくりは、さまざまな気象条件がそろったときにしか見ることができません。
まずは雪質。ある程度の湿気を含んだ粘り気のある雪であることがポイントです。北海道のように気温が低い地域だと、雪がサラサラのパウダースノーなので、雪の上を転がってもくっついてくれません。やはり、日本海側の地域に降るような、やや粘り気がある雪であることが条件のひとつとなります。
さらに、雪の降り方も重要です。ある程度硬くなった雪の上に、10cm未満の雪が新たに積もると、めくれやすくなります。数十cm以上のドカ雪が降った後では、きれいに転がることはできません。
次に重要なのは風です。雪まくりは幅が50cm以上にもなる場合があるといいます。そんな重たい雪の塊が転がるためには、ある程度の強い風が必要です。とはいえ、ホワイトアウトになるような強風では、かえって吹き飛んでしまいます。風は強すぎず弱すぎず。うっすら積もった新雪がまくりあがって転がるほどの、ちょうどよい強さの風が吹くことがポイントです。
今年は北海道でも目撃された。気温が低い北海道では珍しい現象
湿気の多い雪質であることが条件となる雪まくりですが、今年はサラサラの雪が降る北海道でも観測されて話題になりました。
観測されたのは北海道の北端、利尻高校のグラウンドです。ここで発見された雪まくりは幅が50cmもある“大物”で、地元のニュースでも取り上げられました。
また、1月16日にはオホーツク海側の遠軽町(えんがるちょう)で、大量の雪まくりが見られました。この日の午後の気温は6.4℃、風速は5.2m。1月の北海道にしては気温が高い日だったので雪の湿り気が多くなり、しかも、程よい風が吹いていたことも重なるなど、雪まくりが発生する条件が整っていたのでしょう。
いずれにせよ、北海道の北部やオホーツク海側で雪まくりが発生するのは、大変珍しいということです。
参考
遠軽町:自然がつくりだす不思議な現象~雪まくり
北海道文化放送:グラウンドに"白いロールケーキ"!? 冬の珍現象「雪まくり」北海道各地で出現し話題
富山市科学文化センター:ふしぎ新発見 強い風でのり巻き状に 雪まくり
BBC NEWS JAPAN:珍しい自然の雪ロール 英南西部で「雪まくり」発生
雪と氷にまつわる自然現象は雪まくりのほかにも、ダイヤモンドダスト、ジュエリーアイス、フロストフラワー、御神渡りなどがあり、それぞれ、気象条件などがそろわないと、なかなか出会うことができません。そろそろ梅の便りも聞こえる時期ですが、北国は雪と氷の白い世界。地域によってはまだまだ冬の自然現象を見ることができそうです。