俳句は世界で一番短い詩。五・七・五の17音に「心に感じた今」を詠み込む俳句が多くの人に親しまれています。テレビ番組でも芸能人がその才能を競い合っているようすは真剣そのもの。先生の厳しい添削は見ているだけで俳句の勉強になり、楽しみにしていらっしゃる方も多いことでしょう。
今そこにいるあなたが感じていることを言葉にすくいあげて、五・七・五に納めれば1句できあがり!
「俳句の日」にちなんで、記事を読みながら一緒に「私の1句」を作ってみませんか? メモとペンを用意して、いざ俳句の世界へ!
まず、身の回りの気づきを書き出しましょう。大切なことは五官をフルに活用すること!
何かアレ?と思ったり、フフってひとり笑っちゃった、なんてことはありましたか? 心に残ることがあればそのことを。いつもの通りの一日だったという方は、今あなたのいるところをぐるっと見渡して心にコツンと当たった物事をメモ帖に書き出してみましょう。じっくり観察してください。目でよく見たら次は何か聞こえてくる音はないか、匂いや味わいそして手ざわりといった、五官を研ぎ澄ませて感じたこともメモしておきましょう。それが俳句の種になるのです。
私のメモ帖はトマト、きゅうり、茄子、買い物してきたばかりの夏野菜が並んでしまいました。夏バテ気味が心配になり、しっかり野菜を食べてビタミン補給をしたいと思っていたのです。帰りに見た蝉が飛ぶ姿も心に残りましたので書き留めましょう。
あなたのメモ帖にはどんな事がならびましたか? 朝顔が色鮮やかに咲いた朝の嬉しさ、暑さで灼けそうな道路や、久しぶりに手にした友の便り、夕暮れどきの犬を連れた人の汗をふく風景や、水滴のついたグラス、アイスコーヒーを一口含んだ時の救われたような安堵感。
さあ、それでは集めた種を俳句にしていきましょう!
「季語」は俳句には欠かせません。季節を表すことばを入れる、これが俳句のお約束です
8月も半ばを過ぎましたが、この暑さに負けまいと毎日闘うような心持ちだと思いますので、暑さを表す季語をあげてみましょう。
「炎熱」「炎暑」「炎天」「炎昼」「極暑」「溽暑」等々、エッこんなに! て驚くくらいあります。
共通するのは暑さですが、「炎熱」「炎暑」は太陽が直射する熱気を、「炎天」はそういう空に注目して、「極暑」は極まるという程度を、「溽暑」には湿気の多いムシムシ感を表しています。
このように季語とは、季節の中から独特の世界観を抽出し一語にこめたもので、ここがポイントなんです!
季語が表す世界をよく理解して、自分の表現したいことと合うかどうかをじっくり考えてから選びましょう。季語がぴったりはまると、たった17音ですが、読み手の想像力を大きく広げる力となり、そこに一つの俳句の世界が作り出されていくのです。季語の選び方は大切なんですね。
今の状況の中で俳句を作ろうと思ったら季語は夏です。ところが8月といえど立秋を過ぎてしまった現在の季節、実は秋となるのです。「え!?」っと驚かれるかもしれません。そこで俳句における季節を少し学んでおきましょう。
春とは立春から立夏までの2月、3月、4月、夏は5月、6月、7月となり立秋まで、秋は立冬までの8月、9月、10月、そして冬が11月、12月、1月となり立春を迎えます。実際の季節とはズレを感じると思いますが、季節の移り変わりは少しずつ気づかぬうち進むもの。8月の暑さの中にもどこかに、きっと秋はそっと入り込んでいるかもしれない、そういう敏感な心を大切にしているのが俳句だともいえるのです。
そこでオススメするのは『歳時記』です。春夏秋冬の季語が掲載されており俳句を作る人にとっては必須アイテム。もし興味を持ったら本屋さんで手にとってみてください。
さあ、季語を選んで、いよいよ1句を作って行きましょう
どんな季語を選びましょうか。例えば、私がメモ書きしたトマトやきゅうり、茄子といった夏野菜、「扇風機」「風鈴」といった身近なものも夏の季語になります。そして秋の季語で今に合うものといえば「残暑」「台風」また8月の夜空は俳句の格好のテーマとなります。「天の川」「流星」「星月夜」もロマンを感じる句ができそうですよ。
今回はきまりにとらわれず、今自分が感じている季節のことばを季語として自由に作りましょう。買って来たトマトを冷蔵庫に入れてホッとしたらこんな句ができました。
「一盛のトマト冷やして午睡かな」
いい感じ? と読み直し大きな間違いを見つけました。季語が二つ「トマト」と「午睡」です。俳句は「季語一つ」が原則。二つ以上の季語を「季重なり」といって好みません。それは季語に「こめられた意味」が生かされないからです。1句には一つのことを詠み込みましょう。
「一盛の冷たきトマトある夕餉」
トマトの方を生かして作り直しました。トマト好きに冷えたトマトは夏のごちそうなんですよ。
さて、昨日会った友人にも協力をお願いしたらこんな句をもらいました。
「茄子漬けの塩味じゅわりもう一杯」
昼の定食で最後の一口の茄子漬けの汁が口に広がったとたん「もう一杯食いたい!」と思ったそうです。俳句としてはちょっと乱暴な感じがしますが、ジュワッときた瞬間の美味しさを一緒に味わえるのがいいですね。
最後にもう1句
「炎熱が染めるカーテン午後三時」
日が傾き始めてもいっこうに変わらない日射しの強さを詠んでみました。
さあ、あなたの1句はどんな句になりましたか? 「俳句の日」を少し楽しんで頂けましたでしょうか。日々の生活の中で心の言葉を拾っていくのは楽しいものです。そして積極的に季節を感じようとする気持ちも大切にしていきたいですね。やがて来る秋にはどんなことを俳句にしてみましょうか。続けてお楽しみ下さい。