梅雨が明けた途端の猛烈な暑さ、そして台風と、記憶に残る令和最初の8月となっていますね。とはいえ、お盆が過ぎた標高の高い地域では、朝晩の涼しさを感じられる頃となり、季節は確実に移ろいでいっています。
すでに暦のうえでは秋ですが、8月23日からは二十四節気の「処暑」(暑さがおさまる頃)に入ります。学校では新学期が始まりますし、気分的には「夏惜しむ」という言葉がふさわしいのかもしれません。
さて、秋といえば虫、虫といえば秋……であることをご存じですか? 虫は一年中いるのになぜ?と思いますよね。それは、桜を「花」、十五夜を「月」とするように、歳時記では「虫」といえば、秋に草むらで鳴く虫のことを指すのです。
そこで今回は、秋に鳴く虫の種類や特徴、また別名などを調べてみました。
秋の「虫」の種類や特徴とは?
ところで、虫が鳴く、というのはなぜなのでしょうか? 夏に鳴くアブラゼミやミンミンゼミ、初秋のヒグラシなど、ご存じの通り“鳴く”というのは求愛行動であり、秋に鳴く虫も全てがオスなのだそうです。
その鳴き声は秋の訪れを感じさせるものであり、風物詩でもありますが、実際どんな虫がどんな鳴き声をしているのでしょう。代表的な種類を簡単にご紹介していきましょう。
馴染み深い「蟋蟀(こおろぎ)」
コオロギ科の昆虫で、日本には30種類ほど生息。鳴き声もそれぞれ違い、一番大きい「閻魔蟋蟀(えんまこうろぎ)」は、コロコロ。三角蟋蟀(さんかくこおろぎ)は、キチキチキチ。綴刺蟋蟀(つづれさせこおろぎ)は、リリリリ、と鳴く。
別名は「ちちろ」「ちちろ虫」「つづれさせ」など。
美しい鳴き声の「鈴虫」
スズムシ科の昆虫で、長方形の暗褐色。リーンリーン、と鈴を振るような鳴き声が特徴。鳴き声に魅了され、飼育している人も多い。
別名は「月鈴子(げつれいし)」。
鳴き声が特徴的「松虫」
コオロギ科の昆虫で、鈴虫に似ているが、鈴虫よりもやや大きく、赤褐色で腹は黄色。松林や河原で、チンチロリン、チンチロリン、と澄んだ声で鳴く。
別名は「ちんちろ」「ちんちろりん」。
呼び名が違う「草雲雀(くさひばり)」
コオロギ科の昆虫で、体長は1cm弱。灰褐色で、頭には体長の4倍の触覚を持つ。鳴き声は、フィリリリリ、と小さな鈴のようで、朝方に鳴くことがある。関西では「朝鈴(あさすず)」と呼ぶ。
別名は「朝鈴」「金雲雀(きんひばり)」。
生息地が限られる「邯鄲(かんたん)」
コオロギ科の昆虫で、体長は約1.5cm、淡い黄緑色をしている。関東以北には多く生息するが、西日本では高地のみ。草むらでルルル、と夢見るように美しく鳴く。昔の中国の邯鄲という町で、盧生という青年が一晩で栄枯盛衰を体験した夢を見た「邯鄲の夢」という故事が名前の由来。
ほかにもある「虫」の季語
代表的な虫をご紹介しましたが、まだまだ特徴ある虫と、虫が付く季語をセレクトしました。
その他の「虫」
チンチン、と鳴く「鉦叩(かねたたき)」。チョンギース、と鳴く「螽斯(きりぎりす)」。スイッチョ、と鳴く「馬追(うまおい)」。ガチャガチャと鳴くのは「轡虫(くつわむし)」。飛びながらキチキチと鳴くから「きちきち」とも呼ばれる「飛蝗(ばった)」など。
たくさんの「虫」
虫は単体で鳴くこともあれば、たくさんで競うように鳴くこともありますね。それを「虫時雨」「虫すだく」などと呼んでいます。また晩秋に盛りをすぎて鳴く虫を「残る虫」「すがれ虫」とも。
夜だけではない「昼の虫」
虫は夜だけではなく昼も鳴いています。実は虫が鳴く気温というのが、15度から30度の間といわれており、気温が15度を下まわると鳴かないそう。そこで気温のあがる昼に鳴くのが「昼の虫」なのです。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版/広辞苑)
虫の声に癒される理由
──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
いかがでしたか? 虫といってもさまざまな種類と特徴がありましたね。姿かたちは見えなくても、あの虫かな?と想像するのも楽しいですね。
人が感じる心地よい気温は20度~25度あたりだそうで、時期でいうと8月下旬ころから10月ころ。そういう意味でも、虫が鳴くころは心身ともにリフレッシュできる陽気プラス虫の声で癒されること間違いなしですね!