早いもので平成30年も残すところあと3日となりました。朝夕の寒さも増し、夕食に温かいものが嬉しい季節です。年末年始、家族でお鍋を囲む機会も多くなりますね。地域ごとに風土を活かした鍋物がありますが、時代によっても流行があるようです。2009年から2018年まで毎年、1位おでん、2位すき焼き(紀文・鍋白書より)は不動の人気、以下は変動があり、今年は豆乳鍋がはじめてベスト10に入りました。「鍋と食卓」のいい関係についてお話ししましょう。
鍋の歴史はいつから?
日本の食文化で鍋はいつからどのようにはじまったのでしょうか?弥生時代に「土器で煮て食べる」、古墳時代には「土で囲ったかまどがきでる」という記録があり、これが囲炉裏で煮炊きをするはじまりと考えられます。平安時代927年頃に鉄鍋が朝廷へ献上された(『延喜式』より)という記録もあり、鎌倉時代には精進料理の原型が完成されました。今も鎌倉の街には精進料理のお店がたくさんありますが歴史の深さを感じますね。その後室町時代には、かまぼこ・はんぺん・しんじょ・つみれなど、おでんのルーツが料理本や公用日記に記録され、日本の食との関わりの深さが伝わってきます。
江戸時代に花開いた鍋料理
囲炉裏で煮炊きをする食生活は主に農村で発展してきましたが、江戸時代になると京都に初の湯豆腐店が開店(寛永12年/1635年)し、『宝永料理物語』(宝永7年/1710年発刊)には現在の煮込みおでんが登場するなど、豆腐を中心に「田楽」が広まったことがわかります。日本人の豆腐好きはつくづくDNAにきざまれたものなのですね。その後、浅草にどじょう鍋の店が開店(享和元年/1801年)するなど、地域性が豊かになっていきました。おでんのことを関西では「関東だき」と呼ぶように、おでんは江戸を中心とした関東地方で発展したのですが、大坂町奉行の随筆『浪花の風』(安政3年/1856年)に関西でこんにゃくのおでんが食べられるようになったという記載があり、この頃には関西でもおでんが食べられていたと考えられます。
※註 「田楽」が転じて「おでん」になった(俳句歳時記より)
食卓を囲む暖かさ
囲炉裏で煮炊きをする農村の生活から始まった鍋料理ですが、調理法だけでなく、食卓を囲むという「家族団らん」の意味が大切なのではないでしょうか。今では囲炉裏ではなくコンロで鍋を囲むようになりました。形は違えど食卓を囲むことに意味がある。寒い季節に家族や友人で集う暖かさ…火を囲む団らんは西洋の暖炉にも共通するものがあります。寒さ対策だけではなく一日の疲れを癒やすぬくもりとしての鍋料理もまた良いものではないでしょうか。まもなく新年を迎えるみなさまの食卓にぬくもりが満ちていますように!
出典
・紀文アカデミー
・暮らし歳時記 鍋物の歴史
・俳句歳時記 冬 角川学芸文庫