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芸術もスポーツもいいけれど、今年は「歴博」で「民俗学の秋」はいかがですか?


長かった高温の季節もようやく過ぎ去り、体を動かすにも、文化活動にも、また食べ歩きや旅行など、何を楽しむにもよい時期になってきましたね。美術館や博物館めぐりも、いいですよね。そんな中お勧めしたいのが、いつ訪れても気持ちの良い緑あふれる広大な城址公園の丘に威容を構える、歴史と民俗学の殿堂・国立歴史民俗博物館。1966年の明治百年事業の大プロジェクトとして歴史博物館設立の計画が立ち上がり、千葉県佐倉市の佐倉城址の一角に昭和56(1981)年研究施設が開館した、日本初の国立の歴史博物館です。ただ、そのクオリティと規模にもかかわらず、今ひとつ有名ではないかもしれません。今回は、ご存じない方のために巨大な「国立歴史民俗博物館」の概要を紹介したいと思います。


知らずにいるのはもったいない!「歴博」とはこんなところです

江戸時代、堀田氏など幕府の旗本・老中が治めた11万石の城下町佐倉。関東で唯一の武家屋敷街や日本初の西洋医学医院「佐倉順天堂」などのある旧城下市街地の西端、郊外の田園に面して突き出した台地に、日本100名城の一つ佐倉城の跡地である、佐倉城址公園があります。国立歴史民俗博物館・通称「歴博」は、その城址公園の北西の一角、かつて侍屋敷があった台地に建設されました。

大学の研究機関もかねるこの博物館は、文献史学・考古学・民俗学の三つの柱をもとに、およそ22万点にも及ぶ貴重な文化財、遺物を、精巧な実物大レプリカやパノラマ模型などをふんだんに使用して日本史と日本列島に暮らす人々の営為を多角的に照射し、観覧者が視覚的に理解・学習できるよう配慮されています。

では、歴博に向かいましょう。最寄り駅は京成電鉄の佐倉駅。バスも出ていますが徒歩ならば約15分、駅前ロータリーからすぐ見える観光案内所でレンタサイクルも借りられます。駅を背にして西に向かうと、城址公園の東端にめぐらされた水掘があらわれます。水掘を越えて城の敷地に入ると、両側が土垣でそそり立ち、常緑樹の古木大木が鬱蒼とする愛宕坂の長い坂。大分県臼杵市の「古園石仏大日如来像」の実物大レプリカを右に見ながら坂を上っていった頂上に、歴博が聳え立ってます。

外見から眺めるよりも中はずっと広大。6つの常設展示室と、企画展示室、ここでしかなかなか見られない歴史民俗資料が揃った図書館やレストラン、書店を備えています。

驚きの迫力・比婆荒神神楽神楽舞台(第四展示室)

驚きの迫力・比婆荒神神楽神楽舞台(第四展示室)


精巧な歴史遺物の巨大レプリカに目くるめく第一~第三展示室

入館料は、一般420円、高校生・大学生が250円、中学生以下は何と無料。さすがは国立、太っ腹です。チケット売り場から右手の、暗いトンネルを抜けると第一展示室。いよいよ長い歴史をたどる異世界のはじまり…なのですが、現在、残念ながら第一展示室のみ、閉鎖中。来年の3月のリニューアルオープン予定です。

そこで、正面に広がるパテオにいったん出て、第二展示室へ向かいます。ここでは、平安時代から室町/戦国/安土桃山までの中世の日本の文化・貴族、武士、庶民の生活を扱っています。京都王朝文化のあでやかな装飾品、装束や貴人の寝殿、洛中洛外図屏風、武士の甲冑や武具、板碑、伝来した鉄砲。そして「一揆」の諸相の紹介、東アジアやヨーロッパ諸国との交易を、巨大復元物や貴重な交易文書をあわせて展示しています。

次の第三展示室が受け持つパートは近世。庶民、そして江戸という巨大都市が出現したことによる多様な文化の発達・発展を紹介しています。流通網の整備により物・人の移動が盛んとなり、娯楽としての「旅」がはじまった江戸時代。観光地を案内する御師の活躍や当時の旅案内のパンフレット、また三重県津市芸濃町椋本にあった旅籠「角屋」を再現し、中も見学できる巨大模型の休憩所は見所。そして第三展示室でユニークなのは江戸時代の寺子屋(手習い塾)を再現し、江戸時代の文字教育、算術教育を、常駐の「手習い師匠」により直接指南を受けることが出来る「寺子屋れきはく」。親切な手習い師匠さんが、ガンガンクイズを出してきますよ。

また面白いところでは伊能忠敬の大日本沿海輿地全図の一部や巨大北総地方の地図にあわせて、忠敬の測量時の歩幅がフロアに表示されていること。自分の歩幅と比べて歩くことが出来ます。

旅籠屋・椋本村「角屋」(第三展示室)

旅籠屋・椋本村「角屋」(第三展示室)


怖い、そして美しい。民俗学の成果が集結した知的なアミューズメント・第四展示室

第四展示室は、歴博展示室の中でも最大の面積を持ち、この博物館の大きな特徴である「民俗」に特化した、歴博の白眉と言ってもいい重要な展示室。多様・多岐にわたる現代民俗文化を「民俗へのまなざし」「おそれと祈り」「くらしと技」の三つに大きく分けて展示。

「民俗へのまなざし」では、日本各地の食文化、芸能、家族像の変遷など、現代人のもっとも身近な日常生活を、民俗学の視点から整理・分析します。

「おそれと祈り」では、石川県のあばれ祭りや西表島の節祭(しち)、広島県の比婆荒神神楽舞台の実物模型を再現し、日本の個性的な祭礼を視覚的に紹介します。また、超自然的な神・精霊・妖怪にも焦点を当て、佐賀県など日本各地の河童伝承について、巨大模型と合わせて詳細に展示。福島県田村市の巨大な道切り人形「お人形様」の実物は、特に眼を見張ります。

「くらしと技」では、宮城県気仙沼市の尾形家住宅が移築され、室内の様子が見学できます。また高知の一本釣り漁船の実物大模型、滋賀県高月の西物部村の昭和50年代のパノラマ模型が実に精巧でお勧めです。個人的に第四展示室は、一日中いても飽きないくらいに好みです。

滋賀県高月の西物部村の昭和50年代の田園風景パノラマ(第四展示室)

滋賀県高月の西物部村の昭和50年代の田園風景パノラマ(第四展示室)


近現代に生じた重いテーマと懐かしさに心が揺れる…第五・第六展示室

第五展示室のテーマは近代。江戸時代が終わり、明治期の近代社会の出発と発展を、産業と開拓の視点から、製鉄、製糸、北海道開拓によるアイヌ文化の破壊、関東大震災の映像資料など近代史の光と影を紹介。第五展示室で特に目を引くのは、大正から昭和初期の都市の盛り場を丸ごと再現した路地の実物大模型。まるでタイムスリップしたような感覚になるできばえです。

第六展示室は、満州事変以降の現代史がテーマ。歴博のある佐倉城址は、昭和初期には「佐倉歩兵第五十七連隊」の兵舎が置かれ、多くの兵士たちが生活していました。連隊兵舎のの内部居室の実物大模型、そして三八式歩兵銃を手にとってみることができます。日本がいかに戦争へと突き進んでいったかの経緯がわかる写真や文書、ポスター、アメリカの爆撃機B-29の1/5模型、原爆資料、千人針の実物など、胸がつまる展示資料が並びます。

戦後の生活革命のパートでは、日本住宅公団、つまり団地の実物大模型が、「昭和」の時代への懐かしさにいざないます。公害病や環境破壊の悲惨さが生み出した遺物やダムに沈んだ村のパノラマ模型、大衆映画「浮雲」で使用されたセットの実物展示、懐かしのCM映像が流れる映像コーナーと、興味深い展示が続きます。そして日本が生み出したモンスター「ゴジラ」の1984年版造作模型で、常設展示は締めとなります。

出口付近にはみやげ物のほかに、歴史民俗学の一般書籍や、歴博の研究施設がまとめたここでしか手に入らない文献も並ぶ充実した書店が。入館料は安いのですが、いつもここでつい散財してしまうのが筆者のいつものコース。

歴博を出るとその南側には、広大な佐倉城址公園が広がっています。整然と整備された天守閣跡の広場から原生林を思わせる森や沼、そして茶室など、散策にも適しています。城址公園の南端にある「暮らしの植物苑」では、この季節古典菊の特別展示、そして毎月興味深い植物関連の講座も開催されています。

今回ご紹介できなかった第一展示室(石器時代~奈良時代までの歴史)ですが、縄文土器や弥生土器は勿論、竪穴式住居や古墳の長持型石棺の実物大模型、縄文人の復元模型と全身骨格、そして沖ノ島の祭祀場と五号遺跡の復元模型など、興味深い展示が盛りだくさんでした。来年の春、桜が咲く頃リニューアル公開。長い閉鎖期間を終えてどのようにグレードアップするのか、今から楽しみです。



国立歴史民俗博物館

佐倉城址公園

大正・昭和の盛り場の再現(第五展示室)

大正・昭和の盛り場の再現(第五展示室)

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