各地で開催されている夏祭りや花火大会を目当てに、たくさんの外国人の方が来日されていますね。言葉の壁もなんのその、日本文化を楽しんでいる外国人の方を見るのはうれしいものですが、いざというとき、思うようにコミュニケーションが取れないと寂しいもの。
「日本語は難しい」……そう言われる要因のひとつに「敬語」があります。相手によって言いまわしを変えるなんて、日本人の私たちにとっても、ホントややこしいですよね。日本人でさえ使いこなせていない敬語(笑)の、中でもよく間違って使われるものをシーン別にご紹介しますので、ご自身の使い方を確認してみましょう!
今回は、下記の日常会話を例にとって、敬語の誤用を考えたいと思います。
【大丈夫です】【どちらに致しますか】【つまらないものですが】
【お体をご自愛くださいませ】【お送りさせていただきます】
【ご苦労さまです】【お世話さまです】【お召し上がりください】
【私には役不足です】【お座りください】
いずれも「えっ、普通に使っているけど……?」と思うものが多いですよね。
では、何が間違っていのか、ひとつずつ見ていきましょう。
義理の父母や久々に会う親戚に、使っていませんか!?
お盆休みにご実家へ帰られる方もいると思いますが、「あら、●●君のお嫁さん、変な言葉遣いするわね」なんて思われたりして……。そんなことがないよう、帰郷前にチェックしておきましょう。
これはNG!【1.大丈夫です】
たまに会う親戚にいろいろ気を遣われるシーンで、遠慮しいしい「大丈夫です」と断る……よくありますよね。はい、それ間違いです。「大丈夫」は相手の申し出や好意を辞退する意味を持たないので、「結構です」という言い方が適切です。ただ、「結構です」と一言で言い切ってしまうと冷たい感じがあるので、「結構です。お気遣いありがとうございます」と言えば、失礼がないでしょう。さらに「全然大丈夫です」と言う人も最近増えてきていますが、これも間違い。使わないようにしましょうね。
これはNG!【2.どちらに致しますか】
「お義母さん、温かいお茶と冷たいお茶、どちらに致しますか?」……。こう言われたら、お義母さん少しムッとしてしまうかも!? 「致す」は「する」の謙譲語で、相手の行動に対して使うのは間違いなのです。「する」の尊敬語は「なさる」ですから、「どちらになさいますか」としましょう。
これはNG!【3.つまらないものですが】
帰省する際に欠かせない手土産。「つまらないものですが……」と手渡しするのが常識だと思っていませんか? それ、古いんです!! 今の常識では「つまらないものを、なんで持ってくるの?」ということから、かえって失礼な表現とされています。適切な言い換え例としては、「ほんの気持ち程度ですが」や「おいしいと評判のお菓子です。お口に合うとよいのですが」などが無難でしょう。
これはNG!【4.お体をご自愛くださいませ】
暑中見舞いに「お体をご自愛くださいませ」って書きませんでしたか? 実はコレも間違い。「ご自愛ください」には「体を大切にしてください」という意味が含まれているので、「お体を」は不要なのです。文末に短く「ご自愛ください」と添えるだけでOK。短いひとことですが、手書きで添えれば、尚、気持ちが伝われますね。
これはNG!【5.お送りさせていただきます】
お中元やちょっとした贈り物にメッセージを添える際、「●●をお送りさせていただきます」って書きがちですよね。コレも間違いです。「送る」に「お」を付けて「お送りする」と尊敬語にし、さらに「させていただく」をつけるので過剰な敬語になるのです。「お送り致します」「お送りします」が適切な表現です。
日常生活で……例えば子どもの学校の先生や保護者同士、ご近所づきあいでこんな会話をしていませんか!?
日常的な会話の中にも、間違い敬語はひそんでいます。
ただ、親しい間柄でも「その敬語、間違っていますよ」と正面切ってはなかなか言えないもの。だからあなたにも、誰にも指摘されずに、何年も使い続けている間違い敬語があるかもしれません……。
これはNG!【1.ご苦労さまです】
向かいの奥さんが道の掃除をしているのを見て「ご苦労さまです」と声をかける……。ソレ、失礼ですから~! 「ご苦労さま」は目上の人から目下の人に対してかけるねぎらいの言葉。状況によって「お疲れさまです」や「ありがとうございます」を使いましょう。
これはNG!【2.お世話さまです】
息子が風邪で学校を休むので、担任の先生に電話を……。「先生、いつもお世話さまです」。これ、実は失礼な表現だって知ってましたか? お世話になった相手への敬意を表す言葉ではありますが、かなり軽いニュアンスです。よって、「お世話になっております」が無難です。
これはNG!【3.お召し上がりください】
娘の学校の先生が家庭訪問にいらした! お茶菓子を出して「先生、遠慮なさらずお召し上がりください」って何のためらいもなく言っていませんか? でも、コレも間違い敬語なんです。「食べる」の尊敬語である「召し上がる」に、さらに尊敬の意味を持つ「お」をつけるので過剰な敬語になってしまいます。この場合の正しい表現は「召し上がってください」になります。
これはNG!【4.私には役不足です】
息子の学校のPTA役員決め。そんな大それたことはできないと「私には役不足ですから」と断ったつもりが、周囲の人々は怪訝そうな表情を受けべています。なんてことがないようにに次のポイントを覚えておきましょう。
「役不足」は、“自分がするのにふさわしくない(小さな、つまらない)仕事”を与えられて、不満を表す時に使います。“私はこの仕事をするのに、十分な能力を持たない”と言いたいのであれば、「私には力不足です」としましょう。
これはNG!【5.お座りください】
電車やバスの中で、ご年配の方やお腹の大きな女性が難儀そうに立っている……。思わず「こちらにお座りください」と席を譲り、なんかイイコトしちゃった、なんてご満悦なアナタ! 行動はとても立派ですが、実はその表現、少し間違っているんです! 間違い敬語と言い切るのは厳しいところもありますが、「おすわり」が犬に対して使う「おすわり!」をイメージさせることから、最近はあまり推奨されない表現とされているからです。こんな場面では、同じ意味の「お掛けください」を使うのが無難でしょう。
―― いかがでしょう? 自分が普段使っている表現が入っていませんでしたか。間違いだと気づかずに使い続けていた方は、これを機に正しい敬語を使うよう意識してみてくださいね。そして、友人、隣人、親戚などがこれらの間違い敬語を使っていたら、鼻高々(相手に悟られないよう 笑)に「それ、間違いですよ」と耳打ちしてあげましょう!