桜前線もようやく北海道に上陸し、道南は今、ちょうど桜が見ごろです。前線はこれからぐんぐん北上し、5月下旬には道東・道北が桜の季節を迎えます。
桜の名所、五稜郭公園がある函館は今、大勢の観光客が訪れ、大変にぎわっています。そんな函館は路面電車が走る街としても知られていますが、日本でも珍しい最古の市電がいまだに現役で走っています。このレトロ型は映画のロケや貸し切りで使われることも多く、電車ファン以外も、その“勇姿”を一目見ようと函館に足を運んでいるそうです。
レトロな旧型車両は「動く博物館」。映画にも登場。現役でがんばる500形!!
市電の歴史は古く、日本では明治の中ごろから走っていて、現在は多くの都市で市電が利用されています。最近では2~3連接車や低床車などが増え、ますます便利になっています。
一方、函館では、昭和の香りが漂う最古参の旧型、1950年製の500形が現役で走っています。現在函館で運行しているのは30両ありますが、500形はそのうちのたった1両で、丸みを帯び、どっしりとした形が特徴です。
函館の異国情緒漂う街並みに、レトロな市電の佇まいは欠かせません。2016年に公開された函館ロケの映画のうち、3つの作品で、この500形が使われました。また、全国の鉄道ファンやテレビの撮影など市電を借り切るときにも、500形が指名されることがよくあります。そんな人気を受けて、函館市でも新旧車両を交えて「動く博物館」と位置づけ、函館の市電をPRしています。
ハイカラ号は10月いっぱいまで運行。車掌が乗っている大人気の市電。
元々は明治43年に千葉県の会社が導入した車両でしたが、大正7年に函館市が買い取りました。昭和12年までチンチン電車として活躍し、その後はササラ電車となった時期もありましたが、平成5年に復元され、現在は観光客に大人気の車両です。
防寒には向いていない車両なので、冬には走っていません。今年の運行は、4月15日~10月31日のほぼ半年間。車掌さんが乗っているのでワンマン車ではありません。
函館を走るハイカラ号は、街並みの写真を撮るときに、絶好のアクセントとなります。写真好きの方や鉄道ファンのほか、観光客にも大人気の車両です。
運行するのは、毎週月・木・金・土・日曜日で、火曜と水曜は運休。運休日は車両点検のため、駒場車庫の1・2番線に置かれています。料金は市電の一般車両と同じです。
最新車両だって走っている。駒場車庫も人気スポット。
函館にはじめて市電が走ったのは1913年(大正2年)。100年以上の長きにわたって、市民の足として活躍してきましたが、2007年には11年ぶりに新型車両を導入しました。
新しい市電は9600型で完全低床車。以前の低床車は床が低いスペースが一部分でしたが、9600型は入り口から出口まで段差がありません。函館の市電でははじめての2連接車で、冷房もついています。ほかの都市でも最近はこのタイプの車両が増えています。
最新型と最古型、どちらの車両も現役で活躍する都市は、函館以外ではなかなかお目にかかることはできません。もし、桜が咲く函館で、これら2車両がすれ違うシーンを写真で撮れたら、これは貴重な1枚になりそうですね。
さらに、函館の市電の“中枢”である駒場車庫は、駐車場でもあり、整備工場でもあります。いつも、さまざまな形式の車両が並んでいますが、運がよければ、新旧車両が仲良く肩を並べている(?)姿を見ることができるかもしれません。
〈参考サイト〉
・「6月10日は路面電車の日」(tenki.jpサプリ 2015.06.10)
・「昭和の香り漂う外観 旧型車両の運行継続 函館市電 映画撮影でも人気」(道新電子版2017.3.13)
・「市電ファン興奮! 駒場車庫ガイド」(はこぶら)
・「函館市電 “動く博物館”でPR 最古の車両継続使用へ」(毎日新聞ウェブ 2017.1.12)
・「函館市電 車両のご紹介」(函館市役所)
札幌や東京、長崎など、日本には市電が走っている街が数多くあります。一時は自動車の走行のジャマになるとされ、市電を廃止して地下鉄化されましたが、最近は、排気ガスが出ない、階段の上り下りがない、建設費が安い、一度に大量に輸送できるなどの理由から、市電の人気が復活しつつあります。
欧米ではLRTという路面電車が一般的で、市民の貴重な足として、日々活躍しています。函館のレトロ電車の保存も、単なる観光の呼び物としてではなく、市民が当たり前のように利用している交通手段でもあります。この先も修理・修繕を施して、この最古の市電を残してほしいですね。