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さあ、蝶も飛ぶ準備! いよいよ春が始まります。七十二候「菜虫蝶と化す」


今日は、真冬なみの寒気が日本列島を襲っています。とはいえ春はもうすぐそこ。二十四節気の啓蟄も末の候となりました。「菜虫蝶と化す」地中から出てきた虫たちが羽化して蝶になり春の野に飛びだしていくころです。花の蜜を求めてひらひらと舞ふ蝶は歌でも口ずさまれ、軽やかな美しさを感じますが実は昆虫です。虫としての生態も確認してみましょう。


蝶は完全変態をする昆虫の仲間です

成長とともに体の仕組みや形を変えることを変態(へんたい)といいます。蝶のように卵、幼虫、蛹(さなぎ)、成虫、というように変態するものを完全変態といいます。また蝉やトンボのように、幼虫から蛹にならずに成虫になるものを不完全変態といいます。

蝶の一生は大まかに分けると4つの段階があります。

まず「卵」です。卵の中で幼虫の体が出来上がると、幼虫は内側から殻を食べて穴をあけて出てきます。これが孵化(ふか)です。多くの蝶の幼虫は孵化した後に卵の殻を食べてしまいます。卵の殻には必要な栄養があるから、あるいは殻を残しておくと天敵に見つかってしまうので証拠を消すため、などの説があるそうです。

そして「幼虫」は餌となる植物を食べ始め、体が大きくなると脱皮をします。何回かの脱皮をくりかえして大きくなった幼虫は蛹になります。

「蛹」はまず前蛹(ぜんよう)といって糸のような粘液をだして台座を作り、背中に帯糸(たいし)という紐状のものをかけて体を固定します。しばらくするとここから脱皮をして前蛹を脱ぎ捨てて蛹になります。やがて蛹が羽化(うか)し「成虫」が出てきます。これが蝶ですね。


地球の自然生態系の中での蝶の役割は?

卵から成虫になるスピードは、種類や環境によってまちまちです。成長スピードの速い例ですと、卵4日、幼虫16日、蛹8日、たった28日です。体が小さかったり、成長期の気温が高いなどといった生育条件があるようです。遅い例をみてみると、卵約8ヶ月、幼虫42~50日、蛹約20日、合計約10ヶ月かかる蝶もあるのです。卵のまま次の年の春まで待つもの、卵の中で幼虫になって冬を越し翌春に卵を割って出てくるもの、と環境に適応して成長し身を守っているのですね。

このように環境に敏感に適応できる蝶は、南極大陸を除く全世界に分布し、日本では250種類ほどが知られています。幼虫の時期はアオムシ、イモムシ、ケムシなどと呼ばれそのグロテスクな姿を春先はよく目にすることがあります。成虫になればがらっと姿を変え、長い触角は先にふくらみをもちます。鱗粉でおおわれる四枚の翅で飛び回り、ストロー状に細長く伸びる口吻で、花の蜜や樹液などを吸います。

このように蝶は幼虫も成虫も植物を主な食物としていいます。これを自然生態系の中で「植食者」といい、植物を直接食べる第一次消費者となります。この植食者は第二次消費者である「小型肉食者」の餌となることで自然生態系の重要な役割を果たしているのです。

翅の色の華やかさが春の世界を飾る蝶ですが、自然の中での生物としての役割は厳然とあるのですね。


美しさゆえに・・・歌や俳句の世界では人気です

♪ちょうちょちょうちょ菜のはに止まれ~

だれでも口ずさんだ歌ですね。彩りあざやかな大きな翅をもつ蝶は、花の蜜を求めてひらひらと舞ふことで、多くの歌人や俳人に詠まれてきました。そんな作品に目を向けてみましょう。

散りぬれば後はあくたになる花を思ひ知らずもまどふ蝶かな 僧正遍照

蝶の羽のいくたび越ゆる塀の屋根 芭蕉

てふてふや幾野の道の遠からず  千代女

高々と蝶こゆる谷の深さかな   原石鼎

山国の蝶を荒しと思はずや    高浜虚子

春の日なが、それぞれが蝶に託す思いはさまざまですが、そのはかなさゆえに人の心をとらえるのかもしれません。

参考:

『自然保護』2011年7/8月号 石井実(大阪府立大学生命科学研究科教授)

『チョウの生物学』本田計一、加藤義臣 東京大学出版会

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