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北陸の冬 エルニーニョと正のダイポールモードで暖冬は一般論 鍵を握るのは北極振動


今冬の北陸も、日常生活に影響の出る短期的な大雪の可能性があるものとして、十分な備えをして下さい。今回発表の寒候期予報では、冬の時期に大きな影響を与える北極振動の予想は難しく、考慮できていません。短期的な大雪が、クリスマスや年末年始、受験シーズン等と重なれば、大きな影響が出る可能性があります。常に最新の1か月予報などで情報のアップデートをするようにして下さい。

●気象台発表の寒候期(12月~翌2月)予報

9月19日、新潟地方気象台より、福井・石川・富山・新潟の4県を対象とした「北陸地方の冬(12月~翌2月)の天候の見通し」が発表されました。そのポイントは、「冬型の気圧配置が弱く寒気の影響を受けにくいため、冬の気温は高く、降雪量は少ない」ということです。また、「冬の降水量はほぼ平年並の見込み」とのことです。

その背景は、
①地球温暖化の影響などにより、全球で大気全体の温度が高い。
②エルニーニョ現象と、正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残る事により、積乱雲の発生が太平洋熱帯域の日付変更線付近で多く、インド洋熱帯域の東部からインドネシア付近で少なく、インド洋熱帯域の西部で多く見込まれる。

こうしたことから、上空の偏西風は蛇行し、日本付近では平年より北を流れやすいということです。北陸地方への寒気の南下は弱く、降雪量は少ない予想とされています。

●エルニーニョ下での寒冬多雪 負の北極振動の強化が鍵

図は、北半球における'76年度の年末年始(12/27~翌1/5)の500hpaの高度と平年偏差及び北陸4地点の日降雪量です。

左側の500hpaの高度と平年偏差図より、'76年度の年末年始は、日本付近は寒色系の領域で気圧が低くエルニーニョ現象下であっても北極圏から寒気が流れ込みやすく気温が低い領域に対応しています。この期間(10日間)の北陸4地点の福井・金沢・富山・高田(新潟)の降雪量は、それぞれ約200センチ前後にも達し、年越大寒波となりました。

こうしたこともあり、結果として、'76年度の冬(12~2月)の平均気温は、北陸全体では平年よりかなり低く、降雪量は平年よりかなり多く、寒冬多雪となりました。

●エルニーニョ下+正のインド洋ダイポールモード現象の影響有でも寒冬多雪

次の図は北半球における'83年の2/7~2/13の500hpaの高度と平年偏差及び北陸4地点の日降雪量です。

左側の500hpaの高度と平年偏差図より、前項と同様に'83年の2/7~2/13の期間は、日本付近は寒色系の領域で気圧が低く、エルニーニョ現象下で且つ正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残るとされていても、北極圏から寒気が流れ込みやすく気温が低い領域に対応しています。立春後のこの期間(7日間)の北陸4地点の福井・金沢・富山・高田(新潟)の降雪量は、北陸西部の3市で100センチ前後、高田では、200センチ前後にも達する大雪となり、立春後寒波となりました。

こうしたこともあり、結果として、'82年度の冬(12~2月)の平均気温は、北陸全体では平年より低く、降雪量は平年よりかなり多く、こちらも寒冬多雪となりました。

北極振動のメカニズムについては十分に解明されておらず、今回発表の寒候期予報や3か月予報においても、考慮できていません。従って、「エルニーニョや正のインド洋ダイポールモード現象の影響が残り暖冬少雪」は総論では賛成ですが、各論でも賛成とは手放しでは言えないのが正直な所です。寒気流入の動向については今後も注意深く見ていく必要があります。

●降雪量を決めるもう一つの重要なファクター JPCZの動向にも大きく依存

大陸からの冷たい風は、朝鮮半島の付け根付近に位置する長白山脈で二分されます。その後は、風下側の日本海上で再合流、日本海からの大量の水蒸気を含んだ気流は行き場を失い激しい上昇気流をおこします。ここで形成される発達した帯状の雪雲を「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」と呼びます。JPCZが北陸地方のどこを指向するかは、直前まで見極めが必要となります。南まわりの西よりの風と北まわりの北よりの風とのせめぎあいで強雪の予想地域が刻一刻と変わるためです。

降雪は強い寒気と降水の産物。強い寒気があっても降雪のもととなる降水域が該当エリアにあまりかからなければ、降雪量としては多くはなりません。その一方、強烈な寒気ではなくても、JPCZを中心とした、風の挙動によっては、強雪エリアがかかり続ければ、平野部でも短時間のドカ雪となる可能性もあります。「強い寒気必ずしも大雪とはならず」であり、更に踏み込んで言えば、「そこそこの寒気とJPCZの合わせ技でも大雪になる」とも言えそうです。

現実には、どこでどのくらいの降雪があるかは、季節予報の段階では分かりません。ですから、今冬も、引き続き短時間ドカ雪があるものとして、大雪への備えを万全にするようにお願いします。

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