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北陸 今冬はトータルで「並冬」も寒暖の変動大 雪も短期集中型で局地性も強く


北陸地方のこの冬(昨年12月~2月)の平均気温は、「平年並み」となりました。しかし、12月後半と1月下旬は強い寒気が流れ込み、大雪や気温の低い時期があった一方、1月中旬など気温の高い時期もあり、変動の大きな冬となりました。
降雪量も「平年並み」となりましたが、短期的に降雪量が多くなった時期があっただけでなく、地域によっても大きな偏りが見られました。

●3か月平均は平年並みでも変動の大きい冬 記録的な寒波襲来も

北陸地方のこの冬(昨年12月~2月)の平均気温の偏差(平年からの隔たり)は、+0.1℃と、「平年並み」でした。降雪量も「平年並み」となりましたが降水量は「平年より多く」なりました。

しかし、これは「北陸の気象官署9地点(新潟、相川、高田、富山、伏木、輪島、金沢、福井、敦賀)」の「3か月」の均した平均値になります。実際の今年の冬の経過はどうだったでしょうか?

グラフは昨年12月1日から2月28日までの日ごとの北陸地方気象官署9地点の平均気温と同平年値の推移になります。

12月前半は比較的気温の高い時期がありましたが、後半は強い寒気が断続的に流れ込みました。12月18日~19日にかけて、JPCZが新潟の中・下越を指向し、記録的な大雪となった所がありました。日降雪量は津川84センチ(18日)、柏崎72センチ(19日)といずれも観測史上1位、長岡75センチ(19日)、守門89センチ(19日)は12月の観測史上1位を更新し、新潟市でも最深積雪が68センチ(20日)に達し、12月としては観測史上2位となりました。この大雪で、柏崎市や長岡市などの国道8・17号では大規模な車両の立ち往生が発生しました。また、大雪による倒木などの影響で長期間の停電も発生しました。12月23日にも強い寒気が流れ込み、最深積雪は伏木で58センチ、金沢で36センチと、今シーズン一番の積雪となった所がありました。

1月中旬は気温の高い時期が続き、12日~14日は富山・金沢で最高気温が3日連続で15℃を超えるなど、季節外れの暖かさとなりましたが、下旬には一転して強烈寒波が日本付近に流れ込みました。1月24日~25日は「十年に一度」の強い寒気が流れ込み、25日9時の輪島の上空1500m付近で-16.6℃は観測史上4位、上空3000m付近で-28.1℃は観測史上6位タイの記録的な強さとなりました。一方、「山雪型」となり、平地で大雪となることはありませんでしたが、25日の最低気温は富山で-5.7℃と2012年以来11年ぶり、金沢では-5.1℃と1997年以来26年ぶりの低温となり、各地で水道管の凍結による断水が相次ぎました。28日~29日は福井で大雪となったほか、富山県の魚津でも一時「顕著な大雪に関する情報」が出るなど、平地でも局地的に大雪となりました。

2月も寒暖の変動が大きく、トータルで平年並みでも中身は寒暖の変動が大きく、雪も短期間に集中的に降ったのが特徴の冬となりました。

●気温の乱高下は偏西風の蛇行が要因 今冬は偏西風の蛇行が大きかった

今シーズンはラニーニャ現象が発生していた影響で、日本の西側で偏西風が南に蛇行しやすい状況でした。12月後半は西回りで寒気が流れ込み、北陸でも里雪型の大雪がありました。
一方、年末年始はヨーロッパなどで記録的な高温となりました。この暖気の波動が北陸地方まで伝播したのが1月中旬となり、北陸地方でも桜が開花する頃の陽気となった所もありました。
その後、ロシアや極東に氷点下60℃の極寒をもたらした強烈寒気が1月下旬を中心に北陸地方まで南下し、記録的な低温となり、水道管の破損や破裂による断水が長引くなど甚大な影響がありました。

このように、偏西風の蛇行が大きかったのが今シーズンの特徴で、偏西風の波動により、低温や大雪の期間と高温の期間が比較的短い周期で交互にやってきて、気温の変動が大きくなりました。別の見方をすれば、いわゆる長期間にわたって居座る寒波はなかったものの、短期的には強烈な寒波が襲来し、雪の降り方も短期集中型であったと言えるでしょう。

●雪の降り方は地域によっても大きな偏り 観測史上初の事態も

今シーズンは雪の降り方に地域的な偏りが大きいのも特徴になっています。新潟の降雪量は187センチと平年より多くなりましたが、富山は125センチと、平年より少なくなりました。富山が北陸4県の県庁所在地で最も降雪量が少なくなるシーズンは、データの揃っている1952年度以降初めてのこととなります。

最深積雪も富山の27センチが最少で、これは島嶼部を除いた北陸・近畿北部・山陰を含めた気象官署の中でも最少となり、もちろん、観測史上初のことなりました。

今シーズンは偏西風の蛇行が大きかったのが特徴で、気温の変動が大きさのみならず、山雪・里雪ともに極端な特徴が出ました。12月後半は里雪が多くあらわれましたが、寒気が大きく西回りで流れ込み、風向きが南西となったことで、JPCZは新潟を指向しやすくなり、南側で発生した北陸前線による強い雪雲も、南西風に流されて石川県や富山県西部までは流れ込みましたが、富山は山の影となり、強い雪雲が流れ込みませんでした。一方、1月下旬の寒波では山雪となりましたが、風が強すぎて雪雲は山間部や太平洋側へ飛ばされたため、富山市を含む北陸地方の平地では雪の量はそれほど多くなりませんでした。

また、上記2事例以外の寒気は風の弱い冬型が多く、石川県の沿岸や富山県東部北(魚津以東)~新潟上越の沿岸には沿岸前線が発生しやすく、強い雪も観測されましたが、相対的に内陸側の富山市の周辺は雪雲が流れ込みにくく、寒気が入ると晴れるパターンも多くみられました。

その他、JPCZが福井に停滞して福井県嶺北地方で大雪となった事例では、JPCZが富山まで北上せず、風も弱かったため、富山まで発達した雪雲が流れ込まなかったこともありました。

北陸地方全体で降雪量は平年並みでも、雪の降り方は地域による偏りが大きく、一概に語れない部分が大きいシーズンであったと言えます。

●来シーズンはエルニーニョ現象発生で暖冬?ただし、エルニーニョ年で大雪の年も

最新のエルニーニョ監視速報によると、ラニーニャ現象は間もなく終息し、夏までにエルニーニョ現象が発生する確率が50%となっており、不確実性が大きいものの、エルニーニョ現象が発生する可能性があります。

エルニーニョ現象は少なくとも1年程度は続くことが多いことから、仮に発生した場合は、来シーズンは「エルニーニョの冬」となる可能性が高まります。

エルニーニョ現象発生時はラニーニャ現象発生時と逆で、太平洋西部で海面水温が低く、対流活動が不活発になる影響で大陸の東部で偏西風が南へ蛇行し、日本付近で偏西風が北に蛇行しやすくなることから、日本付近は暖冬となりやすい傾向があります。

直近のエルニーニョの冬は2018年~2019年となりますが、この年は記録的な少雪となりました。しかし、それ以前のエルニーニョの冬を見ると、一概に暖冬・少雪とは言えない傾向です。

2009年~2010年は「負の北極振動」の影響で度々強い寒気が流れ込み、最深積雪は新潟で81㎝、シーズン降雪量は富山で383㎝と大雪シーズンとなり、特にシーズン最初の寒波では大規模な立ち往生や渋滞が発生しました。

2014年~2015年は山雪シーズンで、山間部では記録的な大雪となった所があったほか、12月と3月のタイヤ交換時期に大雪がありました。

2015年~2016年はシーズンを通しては暖冬・少雪でしたが、1月下旬に強烈寒波が襲来し、石川県能登地方や新潟県の中越で局地的な大雪があり、低温による大規模な路面凍結も発生しました。

地球温暖化が進むと偏西風の蛇行が大きくなるという研究もあり、暖冬傾向にあっても「一発寒波」による短期集中型の大雪は増えるおそれがあります。一方、長期予報では短期的な大雪や、地域による降雪の偏りは表現できていません。このため、仮に予報で「平年並み」や「暖冬・少雪傾向」が予想されたとしても短期的な大雪の懸念に十分に留意し、油断せず対策を行うことが大切となるでしょう。

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