
<西武3軍11-2北海道フロンティアリーグ選抜>◇2日◇美唄市営球場
北海道フロンティアリーグ選抜チームのマスクをかぶった中道航太郎捕手(18=別海)に「気付いていたかどうか、実は…」と事実を伝えた。
「まじっすか!? ガチっすか!? そうなんすか!?」
美唄合宿にやって来た西武3軍に、育成ルーキーの沢田遥斗外野手(19=京都国際)がいた。試合になって、捕手と打者として距離も1メートル弱。
中道は昨春、別海高(北海道)の主将兼捕手として、21世紀枠でセンバツに出場した。
沢田は昨夏、京都国際の主力として夏の甲子園初優勝に貢献した。
これも巡り合わせだ。中道は最後の夏は甲子園に届かなかった。引退後は「ぼーっとしてましたね。大学に行くか、今の道に行くか考えていて」。人より牛が多い町、北海道別海町の出身。父は漁師だ。
後継ぎになることを決めた。別海高を卒業し、この春から道南の鹿部町にある北海道立漁業研修所で学んでいる。ただ、周囲からの「野球を続けてほしい」との期待も大きかった。
そうして独立リーグの別海パイロットスピリッツに入団した。学校で漁師の資格取得を目指しながら、週末になると別海町などでの試合に参加してきた。
無事に卒業となれば、来年からは羅臼港で見習いとして船に乗ることが内定している。「秋鮭の定置です。ふぐとかも入ってきますね」。ちょっとした業界用語も混ぜながら、その充実ぶりをうかがわせる。
高校時代は札幌ドームの高校生第1号本塁打もマークした。ただ、簡単ではない野球と漁師の両立。それぞれ、究極に目指すところはどこに-。
「野球はNPB目指しているとかはないので、自分の世界の中で活躍したいです。漁師としては、お父さんの跡を継げるように。少しでも早く一人前として、自分の仕事をしっかりできるように」
取材を終えると「混ぜてぇ~」と集合写真の輪に飛び込んでいったムードメーカー。今年も甲子園が始まる。その先には、たくさんのプロ候補生がいる。【金子真仁】