
<奮闘1年目の夏:千葉担当・北村健龍記者>
高校野球の地方大会が7月29日で終了した。日刊スポーツでは5人の新人記者が取材に奮闘。それぞれが体感した「1年目の夏」を振り返る。
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球児に心動かされた夏だった。地元・千葉の担当を任され、目の前に憧れの名将がずらり。県内で高校球児だった私にとって、経験したことのない緊張感の中、取材に臨んだ。
熱戦が続いた戦国千葉で、ひときわ存在感を放っていたのは、昨夏王者の木更津総合に勝利し、史上最高成績に並ぶ8強入りを果たした四街道だ。千葉の県立校は09年の八千代東以来、決勝進出がない。近年は私立校が上位を独占する中、躍進した。
6月中旬、四街道のグラウンドを訪れると、それまで抱いていた高校野球のイメージが覆された。明るい雰囲気のトレーニングでは互いに競い合い、選手は感情をあらわにする。ミーティングは選手たちで開き、プレーに対して指摘し合い、良いプレーはたたえ合う。練習中にもかかわらず、選手、監督の笑顔がグラウンドにあふれていた。
大会に入っても選手たちの表情は変わらなかった。メンバーは全員3年生。最後の夏のプレッシャーは計り知れないものだが、力に変えた。5回戦の木更津総合戦では、6度得点圏に走者を進めながら1失点。大一番でも無失策と動じず王者を打ち破った。ZOZOマリンスタジアムで迎えた準々決勝でも、習志野吹奏楽部の美爆音に負けじと、はつらつとプレー。グラウンド、ベンチ、スタンドが一体となり「ヨツコウ」ムードで球場を包んだ。
私は学生時代にプレーしていた頃から、緊張にめっぽう弱かった。記者として歩み始めた今春以降も、有名選手や監督を目の前にすると緊張で頭がいっぱいになり、ただ取材に参加することで精いっぱいだった。しかし、四街道ナインは違った。練習のダッシュ1本だろうと、大舞台の強敵相手だろうと、目の前の勝負を楽しんでいた。
四街道の宮田碧波主将(3年)は「つらいこともあったが、みんなでできて楽しかった」。つらいことは必ずあるが、四街道ナインはそこも含めて楽しみ力に変えた。「大好きなスポーツの現場で人としての価値を発揮し、楽しく仕事がしたい」。この夏の球児の姿を見て、記者を志した当初の気持ちに立ち返った。緊張感を楽しみながら、今後も取材現場で食らいついていきたい。【北村健龍】