
<レッズ2-5ドジャース>◇28日(日本時間29日)◇グレートアメリカンボールパーク
【シンシナティ(米オハイオ州)28日(日本時間29日)=四竈衛】由伸好投&大谷V打で快勝-。ドジャース山本由伸投手(26)がレッズ戦に先発し、7回4安打1失点9奪三振と好投し、1日以来となる9勝目(7敗)を挙げた。打線は、「2番DH」で出場した大谷翔平投手(31)の2点適時二塁打で勝ち越した。球宴後、波に乗れない前年王者が、投打の軸の活躍で停滞ムードを振り払った。
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中堅から右翼後方に、雄大なオハイオ川が流れるスタジアム内は、試合開始の時点で気温32度、湿度79%に達していた。山本は1点の援護を受けた初回、同点に追い付かれた。だが、噴き出す汗が止まらなくても、マウンド上の思考は冷静で、身体へのセンサーも正確だった。「調子自体は良かったので、どんどん積極的に行けました」。初球を投じる以前から「試投」でフォームの確認を重ね、明確なテーマを持ってマウンドに向かっていた。
他の投手がまねできないような、山本特有の速いノーワインドアップに、この日は新たなアレンジを加えた。通常バージョンを軸に、左足を少し長めに上げ、ややひねり気味に「間」を取るパターンを加えた。さらに、通常より速めに踏み込むパターンを交え、打者が振り始めるタイミングを見極めた。「あれは、たまに使うやつ。今日は調子もリズムもすごくよく投げられていたので」。元来、体が柔軟で、人一倍器用なタイプでもあり、多様な「引き出し」を持っていた。メジャー移籍後は、あくまでも基軸を重視。だが、後半戦に入り、「テスト」の意味合いも含め、手元で温めていた「封印」を解いた。
データの細分化が進んだ現在、毎回同じパターンで勝つことは不可能に近い。新人捕手ラッシングの配球も新鮮だった。球宴にも選出された3番デラクルスに対する第1打席では、初球から2球連続でスプリットを投じた。「すごくおもしろいと思いました。打者が混乱というか、ちょっと裏をかいていたりできたので面白かったです」。
常に、力勝負で勝つのが、理想なのかもしれない。だが、より多くの引き出しと手練手管がない限り、長く生き残れないのがメジャー。「いろんなことを試しながら、その他にも新しく取り組めたこともありますし、いい投球だったと思います」。2年連続世界一を目指すド軍の若きエースが実感した新境地は、9勝目の数字以上に意義深い。
○…ド軍ロバーツ監督は、笑みを浮かべて殊勲の2人をねぎらった。山本には「とてもファンタスティックだった。試合が進むにつれて良くなっていったのはいい兆候。我々には7イニングが必要だった」と、新エースを「A+評価」。大谷に対しては、「(勝ち越しの)二塁打は大きく、ひと息つけた」と振り返る一方、1回無死二塁から進塁打となった二ゴロを、「とても生産的なアウトだった」と高く評価した。