
<高校野球大阪大会:大阪桐蔭8-0高石>◇22日◇5回戦◇くら寿司スタジアム堺
苦悩を乗り越えた大阪桐蔭の最速145キロ左腕、佐井川湧牙(ゆうが)投手(3年)が今夏初先発で7回を11奪三振3安打無失点と快投した。
今年6月、測定分析機器ラプソードで直球の1分間あたりの回転数を計測。NPB投手でも好数値とされる2500回転をたたき出した。同期ではプロ注目の中野大虎、森陽樹の両右腕が全国的に知られているが、佐井川も左腕として貴重な存在。「球が速くない自分は変化球を磨いて打たせて取ればいい」。チームを8大会連続の準々決勝進出に導き、胸を張った。
小学6年で127キロ、中学生で140キロを計測した和歌山の逸材だが、1年前の夏は憂鬱(ゆううつ)な日々を送った。練習中の転倒で左肩を脱臼。利き腕は机の高さに上げるだけで激痛が走り、シャワーや着替え、食事は不慣れな右腕に頼らざるを得なかった。
「もう自分はチームに関係ないのかな…」。弱気になりかけた時、中野から「はよ帰ってこい、お前が必要や」と声をかけられた。「必要とされていると感じられた。余計に頑張れた」。支えてくれた仲間と最後の夏。投げられる喜びを全身で体現している。
この日は5回2死まで無安打投球。21アウトのうち11個を三振で奪った。西谷浩一監督(55)も「十分先発できる。しっかり準備してくれた」と高評価。背番号11が投手陣の層をさらに厚くしている。【中島麗】
◆佐井川湧牙(さいかわ・ゆうが)2007年(平19)9月10日生まれ、和歌山県田辺市出身。田辺小時代は田辺第一クラブわかしおで野球を始め、小学6年生から投手。高雄中では和歌山日高ボーイズでプレー。大阪桐蔭では3年春からベンチ入り。173センチ、80キロ。左投げ左打ち。