
<全国高校野球選手権宮城大会:仙台育英3-2東北>◇21日◇準々決勝◇石巻市民球場
準々決勝で実現した、宮城の高校野球ファン注目の仙台育英と東北による伝統の一戦。球場外には早朝から行列ができ、約3000人の観客が詰めかけた中、仙台育英が逆転勝ちで3年連続の4強入りを決めた。
先発の最速147キロ左腕、吉川陽大(あきひろ)投手(3年)がライバル打線を封じた。「手ごわい相手でしたが自慢のボールを信じ続けて投げられました」。直球を捉えられると感じるとスライダーとカットボール主体の投球に柔軟に切り替え、10奪三振の2失点完投。7回に奪った1点のリードを守り切った。
悔しさを越え、エースとして一本立ちした。昨春は主戦として経験を積んだが、夏はベンチ外。須江航監督(42)から「夏のジョーカー的存在」と期待を寄せられていたが、夏にかけて体重は5キロ減り、思うような投球ができなくなった。2年生ながら投手陣の一角を託されるはずだっただけに「自覚が足りなかった」。決勝で敗れた先輩の涙を、スタンドからぼうぜんと見つめるしかなかった。
あれから1年。大きく成長した。「昨年があったからこそ今の自分がいます」。エースとして、チームの勝利だけを目指した。3者連続三振で終えた最終回も「最後の打者はストレートで三振を取りにいきたい気持ちはあったんですけど、冷静にカットボールでいきました」と欲は出さなかった。頼もしい姿に、指揮官も「ストレートは見せ球にして変化球でかわしていく投球に切り替えましたが、最後まで徹底してやってくれました」と目を細めた。
宿敵を下し、全国切符まであと2勝。「仲間を甲子園に連れて行く」。吉川が自らの左腕で、思いをかなえる。【木村有優】