
ドジャース大谷翔平投手が、投打二刀流の活躍を見せています。その一方で、米大リーグ機構が女子ソフトボールのプロリーグ、AUSLへの投資を発表。MLBが女子プロリーグと提携するのは初めてというニュースに驚き、居ても立っても居られず、歴史的な開幕戦を見に行きました。
その名もAUSLとはAthletes Unlimited Softball Leagueの略で、Athletes Unlimitedは2021年に米国で設立されたプロの女子スポーツリーグの名称。特にバレーボールやソフトボール、ラクロスなどの競技で知られ、特徴はホームタウン制ではないところにあるようです。
そこでMLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが、女子プロスポーツ界の成長に寄与したい思いからAUSLの活動に注目。「キム・アング氏が主導するAUSLとの連携が理想的である」と判断し、今回のパートナーシップが実現したようです。
アング氏は学生時代にソフトボールの名選手として活躍。大学卒業後にメジャーで球団フロント入りし、ヤンキース、ドジャースでGM補佐を歴任。20年にはマーリンズで北米4大プロスポーツ史上初の女性GMに就任。当時、マンフレッド・コミッショナーが「野球やソフトボールを愛する多くの女性や少女に対し、意義深い前例になるだろう」と声明を発表しました。
しかし、23年限りでマーリンズのGMを退任し、このほどAUSLの初代コミッショナーに就任。「ソフトボール界にとって非常に大きな一歩。MLBが女子プロスポーツに投資すること自体が素晴らしい。今、女子プロスポーツにこれまで以上の注目が集まっている」と喜んでいました。
それまでAUSLは年1回の大会として運営されていたようですが、昨年5月に正式なプロリーグとしてスタート。今年、初めて本格的なシーズンを迎え、全米12都市を4チームが巡るツアー形式でそれぞれ24試合を開催。MLBネットワークなどで全試合を配信するという力の入れ具合です。
そこに全米のトッププレーヤーが集まり、アング氏は「わがリーグには最も才能ある選手が大勢いる」と強調しています。昨年全米大学女子球界でMVPに輝き、「ソフトボール界のバリー・ボンズ」と言われるブリ・エリス内野手(タロンズ)など注目選手がめじろ押しです。
6月7日、米中西部イリノイ州ローズモントでの歴史的な開幕戦が行われました。大都市シカゴのオヘア国際空港からCTAという電車でわずか1駅と便利な場所にあり、地元の人たちいわく「全米でも有数のソフトボール専用球場」が舞台。球場にAUSLの事務局があるのにも驚きました。
午前11時半の開場前から、熱心なファンによる長蛇の列ができていました。いざ場内に入ると、女子ソフトボールの歴史や名選手たちを紹介するコーナーがあり、ソフトボールの魅力を女の子たちに伝えようと、投球や打撃が体験できる施設も充実。まるでメジャーリーグの球場にいるような、楽しい雰囲気でした。
午後2時開始の試合に先立ち、アング・コミッショナーが開会のあいさつをしました。続いて、04年アテネ五輪金メダリストのジェニー・フィンチらによる始球式。そして、バンディッツの先発投手が第1球を投じ、歴史的なシーズンが開幕しました。
試合は元ヤンキースの名将で、現在MLBコミッショナー特別補佐を務めるジョー・トーリ氏や、元ホワイトソックスのケニー・ウイリアムズGMらも観戦。特に、トーリ氏は試合中のインタビューで「昔からソフトボールと深い縁がある」と語っており、メジャー関係者にとっても注目度の高さが感じられました。
確かに、大リーグとソフトボールは強い絆で結ばれています。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、めいがオクラホマ大のスラッガーとして有名。ロイヤルズのボビー・ウィット遊撃手は3人のソフトボール姉妹に囲まれて育つなど、こういう例は枚挙に暇がありません。
こうした背景にはWNBAの成功があり、野球界でも女性アスリートの活躍を後押しする動きが加速するでしょう。いつの日か、大谷選手の長女がAUSL入りし、プロソフトボール選手として活躍する姿を夢見たい気持ちでいっぱいです。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)