
<金足農新グラウンド竣工記念招待試合:金足農1-6大阪桐蔭>◇18日◇秋田・こまちスタジアム
7年前の思いがよみがえった。金足農(秋田)が「新グラウンド竣工(しゅんこう)記念招待試合」に大阪桐蔭を招き、秋田・こまちスタジアムで対戦。1-6で敗れた。18年夏の甲子園の決勝で対戦した両校。当時、兄の吉田輝星(現オリックス)の力投をアルプススタンドで目に焼き付けた金足農・吉田大輝投手(3年)は、先発で6回8安打5失点。現在地を知り、最後の夏へ向け収穫を得た。
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突然だった。シートノックを終えた大阪桐蔭が、みんなで金足農ベンチへ向け「侍ポーズ」を披露した。7年前、金足農のエース吉田輝星が行っていたものだ。粋な“プレゼント”に吉田大輝も応えた。初回の第1球の前、マウンドで同じポーズでお返し。時を超えた両校の縁が伝わるシーンに、スタンドも沸いた。
もちろん、試合に入れば別。吉田は「兄が打たれて負けた相手。自分は絶対に抑える」と決意。だが、初回先頭から連打を許し1点を先制された。2回、3回は三振を重ねたが、4回、6回と長打を浴び、6回8安打5失点で降板。「全国トップレベルの相手から、たくさん吸収、経験できればと思っていたんですけど、やっぱり勝負事なので悔しいです」と唇をかんだ。
収穫もあった。プロ注目の中野、森のリレーに味方打線は7安打で1点を奪った。「自分が0に抑えれば勝てなくはないと知れたので、もう1度自分がエースという自覚をしていきたい」と気を引き締めた。
あの日の甲子園決勝。兄の力投を見て、吉田は自然と涙がこぼれた。「輝星があんなに打たれてボロボロにされたのを初めて見たので、よく分からない気持ちっていうか…自分の中で心が動いたというか…」。以来、動画で見るだけの存在だった大阪桐蔭を相手に投げる機会を得た。「今日も見ていて格好いいと思いましたし、自分たちもそう思われるようになりたいと思います」と敬意を込めた。
秋田大会開幕まで3週間。「2018年の夏の借りは甲子園の同じ舞台で返せたらと思います」と誓った。【高橋香奈】