
<日本生命セ・パ交流戦:オリックス7-3巨人>◇13日◇京セラドーム大阪
オリックスの先発陣に新星が現れた。日体大からドラフト2位入団した寺西成騎投手(22)がプロ2度目の登板で、パ・リーグ新人最速の初勝利を挙げた。プロ2度目、ホームでは初先発の巨人戦(京セラドーム大阪)で5回を4安打1失点。リーグ2位浮上を導いた。石川県出身で、巨人やヤンキースで活躍した松井秀喜氏(51)は浜小、根上中、星稜高の大先輩にあたる。幼少期から見ていた巨人相手に粘投し、プロでの大きな1歩を踏み出した。
◇ ◇ ◇
プロ初のお立ち台でウイニングボールを掲げ、寺西はほおを緩めた。「すごくほっとしています」。パ・リーグ新人最速の25年初勝利。両親に贈る記念球を大事そうに握った。「ここまで育ててもらったので感謝の言葉を伝えながら渡せたら」。観戦に訪れた母に最高の恩返しができた。
無我夢中で腕を振った。初回、先頭の巨人泉口に左前打を浴び、四球と左前打で無死満塁。「本来の姿を早く取り戻そうと。(捕手の)若月さんの要求通りに腕を振って投げました」。丸を低めの変化球で遊ゴロ併殺に打ち取り、1失点にとどめた。2回も1死三塁のピンチを招いたが、甲斐をフォークで空振り三振。「フォークいいなと感じたので、使っていこうと」。カットボール、カーブ、スライダーも織り交ぜてテンポを上げ、4回、5回は3者凡退。5回4安打1失点、2奪三振で待望の1勝をつかんだ。
大先輩の背中が道しるべだ。入寮時には、同郷で小中高の先輩である元ヤンキース松井秀喜氏の著書「不動心」を持参。「小学校の時にお会いしたことがあります。努力の天才。しっかり勉強したい」とバイブルにしてきた。自身は高校、大学とケガが続いた。根上中時代はU15日本代表に選出され、アジア選手権で好投し「スーパー中学生」と称された。星稜では1年夏に甲子園デビュー。だが、2年夏に右肩の関節唇を痛め、3年春に手術。日体大では2年間、リーグ戦の登板はなかった。それでも必ず復活すると諦めず、下半身や体幹のトレーニング、ランニングで鍛え直した。そしてドラフト2位指名されるまでに成長。不屈の姿を野球の神様も見ていた。
チームは巨人に昨季の交流戦から4連勝。昨年は2戦目に斎藤、3戦目に佐藤がプロ初勝利を挙げており、寺西で3試合連続巨人戦でのプロ初勝利投手が誕生した。岸田護監督(44)は「かなり緊張はしていましたけど、最少失点に抑えたところもよかった」と目を細めた。寺西の快投でリーグ2位に再浮上。右腕は「またアピールして2勝目をつかめるように」と引き締めた。白星を重ねる旅の始まりだ。【村松万里子】