
<連載1:大型スラッガー高田庵冬(3年)>
春の東北王者を決める戦いが幕を開ける。第72回春季高校野球東北大会(10日開幕、山形)を前に、東北6県版では注目出場校や選手を全4回にわたり紹介する。第1回は仙台育英(宮城)の3選手。最速145キロ左腕、エース吉川陽大(あきひろ)投手(3年)を筆頭とする「投手王国」が勝利のかぎを握る。打線をけん引するのは4番川尻結大(ゆいと)捕手、大型スラッガー高田庵冬(あんと)内野手(いずれも3年)だ。【取材・構成=木村有優】
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右の大砲はロマンたっぷりだ。183センチ、90キロと恵まれた体格の高田は、今春宮城大会までに高校通算28本塁打。「バッティングは自分の取り柄であり、ずっと自信を持っています」と話す。その言葉通り、昨秋宮城大会では両翼100メートルの球場で左越えに場外本塁打を放った。須江航監督(42)も「長打力に関しては、歴代で1番」と絶賛する。
これだけではない。高田には足と肩もある。小学生の時に走り方の基礎を学ぶ「ランニング・ドリル」を採用。そのかいあり、50メートル走は6・1秒。今春宮城大会では、スタメン3試合で6つの盗塁を決めた。さらに、遠投は中学引退時で105メートル。走攻守の3拍子がそろうスラッガーだ。
努力家であることも良さの1つ。昨秋までは主に一塁手だったが、今春は三塁手で出場。激しいチーム内競争を制し、スタメンをつかんだ。もともと経験はあったが、本格練習は昨年11月から。「自分には技術がないので、とにかくノックで数をこなして差を埋めました」。1日通して練習する日は、午前8時から午後1時までの間はひたすら守備練習。自主練習では基礎から見直した。捕球時の低さにこだわり、柔軟性を取り入れたことで、長身をものともしない足さばきが実現した。
今後の課題は打撃面での「確実性」だ。「甘い球をファウルにしてしまったり、捉えきれないところがあります」。現在は打撃練習から本番を想定。「1球に意識を集中してファウルにしない、確実に捉えるようにしています」としっかりと向き合っている。憧れのプロの世界で活躍するために、さらに走攻守を極めるつもりだ。
◆高田庵冬(たかだ・あんと)2007年(平19)12月12日生まれ、滋賀県彦根市出身。小1で野球を始め、多賀少年野球クラブに所属。中学では滋賀野洲ボーイズでプレー。仙台育英では1年春に初のベンチ入り。183センチ、90キロ。右投げ右打ち。50メートル走6・1秒。好きな野球選手は巨人岡本和真。