
<UEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL):パリSG5-0インテル・ミラノ>◇5月31日(日本時間6月1日)◇決勝◇ドイツ・ミュンヘン
パリ・サンジェルマン(フランス)がインテル・ミラノ(イタリア)に5-0と圧勝し、悲願の初優勝を飾った。19歳FWデジレ・ドゥエが2得点1アシストし、決勝史上最大得点差に導いた。かつての金満路線から、ルイスエンリケ監督(55)の就任に伴い方向転換。規律を重んじ組織としてアグレッシブに戦うスタイルでフランスリーグ、フランス杯との3冠を達成した。欧州3冠は22-23年のマンチェスター・シティー(イングランド)以来9クラブ目で、フランス勢としては初となった。
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エムバペ、ネイマール、メッシ…、世界的スターを並べても届かなかった頂をパリSGがつかみ取った。デンベレ、クバラツヘリア、デュエの3トップが自由自在にポジションを替え、中盤ではビティーニャが的確にボールをさばく。右DFハキミはいつもゴール前にいた。インテルの守備組織を連動性ある攻撃で切り裂き、終わってみれば予想だにしなかった5-0。決勝史上初の5点という大差で悲願の優勝を手にした。
「高いインテンシティーで相手にプレッシャーをかけ続けることができた」。就任2季目のルイスエンリケ監督はそう言って目を細めた。2011年5月、カタール政府系投資ファンドが筆頭株主となり、資金力でスター選手を買い集めた。「金満クラブ」と呼ばれた。代表例はエムバペ、ネイマール、メッシ。それでもCLには勝てなかった。
23年に地に足付けるルイスエンリケ監督の就任に伴い、方向転換を図った。「1人で40点を決める選手がいるより、12ゴールを決められる選手が4人いた方がいい」。エムバペが去っても強いチームを作れるという信念からだった。「もちろんエムバペが残っていても歓迎した。だが今のチームは彼がいないことを挑戦と受けとめている」。
チームに規律を持ち込み、選手全員にハードワークを求めた。個人技に走る傾向が強かったデンベレも変わった。この日のインテル・ミラノ戦でも攻撃以上に守備面で献身的に走った。ルイスエンリケ監督は「デンベレは相手DFとGKに絶え間なくプレッシャーをかけ続けた。バロンドールをあげたい」と称賛した。
10年前のバルセロナとパリSGという異なる2つのクラブで優勝した監督は史上7人目。「パリはCLに優勝したことはない、私たちが初めて優勝したんだ。多くの人を喜ばせることができて本当にうれしい」。
翼よ、あれがパリの灯だ-。1927年、大西洋単独無着陸飛行に成功した米国の飛行家リンドバーグは、感動と喜びをこう表した。スペイン人の名将もまた「パリの灯」を見た。