
<日本ハム4-3ロッテ>◇31日◇エスコンフィールド
日本ハム矢沢宏太投手(24)が土壇場でチームを救った。2点を追う9回2死二、三塁で代打で登場。追い込まれながらも中前に落とす同点適時打で試合を振り出しに戻した。さらに二盗も決めて郡司のサヨナラ打をお膳立て。代走準備をしていた中で発揮した驚異の集中力と対応力で、チームに5カードぶりの勝ち越しをもたらし、交流戦前の単独首位を確定させた。
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矢沢は思わず「え、マジすか」と声が漏れた。9回裏の攻撃中に首脳陣から突如「バット振って」と指示が飛んできた。それまで「1回もバットを握っていなかった」。なぜなら、2点を追う7回から同点の走者が出たときに備えて代走準備をしていたからだ。
新庄監督の“勘ピューター”采配に驚きながら、慌ててバットを持った。ベンチ裏で素振りをしようとしたら、再び首脳陣から「いや、ネクスト行って」と指示され、急いで準備してネクスト・バッタースボックスへ。打席では同学年の代打吉田が粘っていた。
その間に何度か素振りし、イメージも膨らませた。吉田は8球目で見逃し三振となったが、矢沢にとっては「『ありがとう』って感じでした。時間をつくってくれたので、ほんとにいろんな価値のある三振だったかなと思います」。感謝しながら打席へ向かった。
MAXの集中力と対応力で指揮官の期待に応えた。狙い球は変化球も、2球連続直球で追い込まれた。「そこからは来たボールに対してコンタクトしていくってシンプルに考えられたので、よかった」。カウント2-2からの5球目を捉えた。
打った瞬間に「ラッキー」と思った。中前へポトリと落ちる同点打。「最初はうれしかったんですけど、一塁に行った時に『これ、俺の盗塁待ちか…』って思って」と再び緊張感が高まったが、代走準備が奏功して無事に二盗に成功。郡司のサヨナラ打につなげた。
突然の打者としての出番にも「ボス(新庄監督)が打てると思って出してくれている。そこは信頼して割り切って打席に立つのが大事」。22年ドラ1の大仕事でチームは今季最多タイの貯金8。1日も勝って2桁貯金に王手をかけ、単独首位で臨む交流戦へ堂々と乗り込む。【木下大輔】