
西武が再び“圧倒的至近距離”に迫った。首位日本ハムと0・5ゲーム差に肉薄。立役者は先発の渡辺勇太朗投手(24)だ。7回無失点、愛称“ナベU”が楽天打線を力で押し込み、前夜の逆転負けの暗雲を消し去った。防御率0点台の今井と6勝の隅田を筆頭に高橋、武内…そしてナベU。簡単には連敗しないチームに仕上がってきた。
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渡辺は強力先発陣の堂々たる一員だ。テーマは「ともに頑張ろう、ですね」と笑う。「みんなで戦ってる感じが今すごくあるので。先発陣だけでも一体感が自然に生まれていて。めちゃくちゃいい状態です」。他球団が恐れるアドバンテージとして君臨する。
分厚い体から分厚く投げ下ろす。圧がある。詰まらせ、へし折る。「今年は遠心力に指が負けないようにしっかり掛けることを(エンゼルス菊池がプロデュースした施設の)KOHで学んだので」。雪降る岩手での自主トレで身につけたのは、言うなれば指とボールの圧倒的至近距離。グッと押し込み、脱力なく18・44メートル先を襲う。胸郭の使い方も改良を重ねてきた。
先発陣だけでこれで22勝目だ。西口監督と投手コーチたちのマネジメントも光る。指揮官は「今(先発ローテを)7人で回せる状況で。今井とか隅田にはしっかり回ってもらってるので、それ以外の投手はちょっと休ませながら、うまく見ながら使っていこうかなと」。ペナントレースの日程消化はまだ3分の1。猛暑も迫る中、慎重なやりくりに秋への期待が広がる。
とはいえ渡辺は次回は中6日を任される。「もう、めちゃくちゃ楽しみです」と大きな体でウキウキだ。先発予定の6月4日ヤクルト戦、母校浦和学院の吹奏楽部がベルーナドーム左翼席で演奏する。夏の甲子園で大阪桐蔭に立ち向かい、準々決勝で敗れた7年前の夏以来の響き。当時は「いやぁ…」といつも何かと照れていた17歳。自分の強みを胸を張って口にできる、たくましい青年になった。【金子真仁】
◆西武の先発陣 防御率0・65の今井、すでに6勝の隅田の両腕が強烈だ。2人はここまで土曜、日曜のローテーションで回ってきたが、6月の交流戦から隅田がカード頭の火曜に回る可能性が高そうだ。高橋、渡辺の両右腕が2夜連続で好投し、昨季パ新人王の武内も上向き。菅井も4勝、与座もすでに1勝。実績ある松本の1軍登板が回ってこない状況にある。
▼西武が今月7度目の完封勝ち。月間7完封は56年6月、61年6月、90年5月、00年5月に次いで5度目の球団タイ記録になる。西武は4月にも完封勝ちが5度あり、開幕から47試合目で早くも12度目の完封勝ち。パ・リーグで開幕47試合消化時に12完封以上は、11年に13完封の日本ハムと今年の西武だけだ。