<明治安田J1:東京0-3広島>◇25日◇第18節◇国立
FC東京のMF東慶悟(34)が、サンフレッチェ広島戦で史上34人目のJ1通算400試合出場を達成した。後半17分から出場。試合は0-3で完敗し、公式戦3連敗を喫したものの、記録は大台に到達した。
東は4月29日のホーム清水エスパルス戦以来4試合ぶりの出場。自らの大記録を勝利で飾れなかったが、極めて現実的だった。
「400試合で勝って祝えて、というのは理想ですよ。でも人生、そんなにうまくいかないですよ。そうやって良いことばかりではなく、つらい思いをしながら経験して強くなってきた自負がある。これからも変わらない。ずっとその繰り返し。だからこそ現状から逃げずに、僕を含めてチーム全体でしっかり受け止めてやっていくしかない」
大分トリニータ時代の09年4月4日、敵地浦和レッズ戦でデビューした。「憧れた舞台の1試合目は覚えていますね」。当時18歳。今でも記憶は鮮明だ。
0-1で負けていた後半30分から投入された。「もうめちゃくちゃ声を1人で出して、当時、家長(昭博)君がピッチに立っていて『お前、気合入りすぎやろ』と言われたのは覚えていますね。当時から熱い思いはあったんだなと」と懐かしむ。
そこから大宮アルディージャを経て13年、東京にたどり着いた。ロンドン五輪(オリンピック)では10番を背負って44年ぶりの4強まで、けん引。68年メキシコ大会以来の銅メダルにこそ届かなかったが、堂々の4位になった。
A代表にも選出された経験がある。クラブでも多くの監督に重宝され、プロ17年目で大台に到達した。
「プロとしてこの数字というのは、自分が今までやってきたことの成果だと思っているので、本当にうれしく思います。今まで自分がやってきたことは間違ってなかった」
決して順風満帆ではなかった。負傷で離脱したこともある。ポジションも変化させながら数字を積み重ねてきた。「いろいろと葛藤して、いろいろな後悔とか挫折とかいっぱいありながら、ここまで来ている」。その都度、成長してきた。
全てをサッカーにささげてきた。プライベートでも「どこかでやっぱり、サッカーというものをずっと頭に入れながら生活している」。オフでも翌日からの練習に備えてコンディションを調整する。オフシーズンも、気付けばサッカーのことばかり考えている。
仲間にも恵まれた。選手や監督、スタッフへの感謝は尽きない。そして何より「逃げない」ことが記録達成の要因だと分析する。
「悪い時もあった中で、その現実から逃げずにしっかり向き合って、自分に何が足りないのか考える。その繰り返しかないと思います」
昨季は紅白戦のサブ組でセンターバックとしてプレーすることもあった。それでも「楽しかった。いろいろな発見があるし、いろいろな角度で見ることで勉強になる」と何事もポジティブに受け入れる。
チームは公式戦3連敗。リーグ17位と、不調にあえぐ。くしくも、苦しみから「逃げない」という自身の信条が最も求められる状況だ。
「簡単ではないですよね。ごまかしてやっても仕方ないので、逃げずに、みんなで意見して『ああしよう、こうしよう』ということがもっと必要になる」。若手からベテランまで、チーム一丸になって勝てる集団に生まれ変わらなければいけない。「僕たちサッカー選手はピッチで表現しないといけない。それが価値」と400試合の節目に信念を再確認した。【佐藤成】