
<楽天-日本ハム>◇24日◇楽天モバイルパーク
楽天浅村栄斗内野手(34)が平成生まれ初となる通算2000安打を達成した。
浅村が西武から移籍してきた1年目の19年に、楽天で監督を務めた平石洋介氏(45=日刊スポーツ評論家)が祝福とともに、浅村の「すごさ」を語った。
◇ ◇ ◇
栄斗の2000安打は素直にうれしいし、本当にすごいと思う。栄斗の何がすごいって、レギュラーの自覚。簡単に「休みます」と言わない。毎日、試合に出続ける責任を持ってやっている。例えば死球を受けた翌日も少しでもいい状態で出られるよう、ぎりぎりまでコンディションを整える。無理と思えばストップをかけるのが首脳陣の仕事だけど、「痛い」と決して言わないし、態度にも出さない。だから、レギュラーとして信頼される。
僕が監督を務めた19年も、弱い面を見せることは1度もなかった。全試合に出たけど、打順を組むとき、まず「3番浅村」から決めていた。軸にと考え、初回から打席が回るようにした。当時の楽天は、島内、岡島、銀次と左の好打者はそろっていたけど、右の軸がいなかった。だから逆方向にも大きな当たりを打てる栄斗が加わったことで、非常に助けられた。
印象に残っている場面がある。3、4点差で負けていた終盤、栄斗がカウント3-0からセンター前にヒットを打った。1点差なら打ちにいって当然だけど、3、4点も負けている終盤に3ボールから打ちにいった。ランナーをためようとするのが一般的だけど、栄斗はそうしなかった。
僕も「待て」のサインは出していなかった。なぜかというと、栄斗の場合、一振りでガラッと雰囲気を変えてくれる。スイングを仕掛けたり、実際にヒットを打ったりすることで、仲間に勇気を与えてくれる。そういう選手。リスクはある。3ボールから打って凡退したら、「何、考えているんだ」と言われかねない。だけど、全く迷わずスイングにいった。しかも、そのときはバッティングの状態が決して良くはなかった。それでも、自分が打って雰囲気を変えてやるぞと。あのスイングを見て、「本当に根性があるな」と思った。もちろん、いつも3ボールから打っているわけじゃない。あの試合は僕の意図をくみ取って、迷わず振ってくれた。
普段から口数は多くないし、人見知りもするタイプ。ぶっきらぼうでつんつんしていると思われるかもしれないけど、実は逆。後輩の面倒見はいいし、周りと争うのも好まない。かわいらしい一面がある。残り2本となって足踏みしていた福岡でのソフトバンク戦前に「気持ちの変化は全然ないのか」と聞いた。そしたら「ついに出てきました。あります」と。14日に3本打って、残り3本となってから急にきたと話していた。栄斗ほどの選手でも、そう思うのだから、やはり2000安打というのは偉大な数字。でも、もちろん、栄斗には通過点。これからも打ち続けて欲しいし、打ち続けてくれるはず。それでも、こう伝えたい。
栄斗、本当におめでとう!(日刊スポーツ評論家)