
<ソフトバンク2×-1楽天>◇18日◇みずほペイペイ
ソフトバンク牧原大成内野手(32)が劇的な一打を放ち、ナインを勝率5割復帰に導いた。1-1で迎えた延長12回1死満塁。楽天西垣のフォークを初球打ちし、値千金のサヨナラ打を右前に決めた。直近4試合は無安打も、ここぞの大一番で勝負強さを発揮した。ベテランの活躍でチームは5カード連続の勝ち越し。最大7あった借金も完済した。20日からは日本ハムとの敵地3連戦。今季初の貯金生活へ、今度は首位チームををたたく。
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右こぶしを力強く握り、突き上げた。牧原大は渡辺に抱きかかえられ、思わず感情を爆発させた。勢いよくベンチを飛び出してきた仲間も次々に駆けつける。もう、もみくちゃだ。手荒い祝福も、心地よい。4万人超えの鷹党も歓喜し、ピンク一色に染まったスタンドは揺れていた。4時間の熱戦にピリオドを打ち、ヒーローは素直に喜びを口にした。
「(サヨナラ打は)自分が決められる試合なので、うれしかったですね」
サヨナラか、ドローか、だった。同点のまま迎えた延長12回1死満塁。「思い切っていこうと。気持ちだけで」。腹をくくり、迷いはなかった。言葉通りの積極性で楽天西垣のフォークを初球打ち。引っ張ったライナー性の打球は内野前進守備を越え、右前にはずんだ。直近4試合はノーヒット。実に19試合ぶりの快音を勝負どころで響かせた。「打てない悔しさが爆発した感じでした」。グラウンドでは目頭を熱くした。
今季は柳田、近藤、今宮ら主力が相次いで離脱した。プロ15年目の牧原大はベテランとして、チームを背負う立場として、より一層の自覚を持ってプレーする。守備の際には1軍経験の浅い若手に声をかける場面も増えた。「僕たちが若い時も、ミスした時に先輩方に声をかけてもらっていた。ライバルですけど、そういうところも大事にやっていきたい」。3回は二塁守備で一、二塁間を抜けそうな打球に横っ跳び。捕球から素早く一塁へ送球。2死一、二塁で先制点を阻止する好守だった。言葉だけではなく、ひたむきなプレーで引っ張る姿がある。
背番号8が攻守で存在感を示し、チームは5カード連続で勝ち越しを決めた。最大7あった借金も完済し、4度目の正直で勝率5割復帰を果たした。20日から首位を走る日本ハムとの敵地3連戦。「僕らは必死に戦うだけ」。そうサラリと言う、ベテランの背中が頼もしい。【佐藤究】