
これが虎の守護神だ。阪神岩崎優投手(33)が3点リードの9回を無失点で締め、史上37人目の通算100セーブを達成した。100ホールドと合わせた大台ダブル到達は史上8人目、左腕では初。ドラフト5位入団で先発、中継ぎと役割を変えながら、いくつもの失敗を糧に成長。最強投手陣を引っ張る男が、記録でも歴史に名を刻んだ。投打がかみ合った阪神は4試合ぶりの勝利を飾り、1日で広島から首位の座を奪い返した。
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岩崎は両手で掲げた記念ボードで顔を隠し、大声援にペコペコと頭を下げた。前日16日は同点の9回に2失点し、負け投手に。お立ち台で「昨日はすみませんでした!」と“ざんげ”して笑いを取った。実直で、しゃれっ気のある人柄がにじむシーンだった。
「昨日の今日で、早くやり返したかった」。失敗に学び、心を強く持って、少しずつ階段を上がってきた。「自分も含め、誰も達成すると思っていなかったと思うんですけど。これからも誰も想像していないような数字を積み重ねていきたい」と穏やかに笑った。
藤川監督からは「おめでとう」の一言をもらい「その、おめでとうがすごくうれしい」と感激した。長年、師事した大先輩。「見て覚えてたり、まねしたり」。リリーフ転向後は配球や流れの読みを教わった。監督になった恩人のもと、節目の数字に到達した。
「終わり」を見据えたプロ入りだった。大学4年時、プロ志望届は周囲からのプッシュで「仕方なく」提出。指名を受け、家族、恩師らと相談して決意したほど自信がなかった。
「3年で終わるだろうなと。全く通用すると思っていなかった。3年は頑張ろうと思いました」
覚悟と裏腹に、球のキレは想像以上に通用した。その3年目の16年。終わるどころか運命的な転機が訪れた。終盤、金本監督から救援転向を告げられた。
「打たれたら、それを生かせばいいだけの話。うまくいかなかった時をプラスにしていけるようにやらないともったいない」
自らリリーフの適性を感じ取った。翌年17年は自己最多66試合で15ホールド。22年から不動の守護神となった。
かつての藤川先輩のように、後輩にも目を配る精神的支柱。責任ある立場が、発奮材料になっている。
「弱気になったら、みんながその姿を見ている。常にみんなを引っ張っていくことを忘れず、前向きに戦う。その姿勢でこれからも」
1日で首位を奪回。こんな投手リーダーがいる阪神は強い。【波部俊之介】
▼通算100セーブ=岩崎(阪神) 17日の広島8回戦(甲子園)で今季11セーブ目を挙げて達成。プロ野球37人目。初セーブは、20年9月3日のヤクルト15回戦(甲子園)。岩崎は通算151ホールドを記録しており、「100セーブ+100ホールド」は史上8人目。