
遅咲きの右腕が最後の春夏にかける。第72回春季高校野球宮城大会が16日に開幕する。6大会連続優勝を狙う仙台育英の初戦は18日に東北学院-日本ウェルネス宮城の勝者と対戦する。今春の中部大会の東北学院戦では尾形陽聖投手(3年)が背番号「1」をつけ、初のベンチ入り。今年3月にはブルペンで150キロを計測するなど頭角を現した右腕が加わり、さらに厚みを増した「投手王国」が秋春連覇を狙う。
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この時を待っていた。東北学院戦に登板した尾形は「緊張はなかった」と、武器である直球を中心に投げ込み、1回1安打2奪三振で公式戦デビューを飾った。「1イニングの大切さや、1球の大切さを改めて感じました」と初マウンドをかみしめた。「投球内容は課題もありましたが、0で抑えられたのは収穫になりました」と振り返った。
冬に急成長を遂げた逸材だ。2年秋までは公式戦での出番はなかった。それでも「レベルが高い場所で競争を制して、甲子園で活躍したい」という入学当初の思いは一切、ぶれなかった。「3年生で絶対にメンバー入りするという一心で練習に取り組んできました」。フィジカル強化のため、ウエートや体幹トレーニング、走り込みに励んだ。
その成果は結果として表れた。昨季までの最速は143キロだったが、ブルペンで150キロを計測するまでに成長。須江航監督(42)は「ストレートが強くなり、変化の精度も上がりました。緩かったスライダーも球速が上がり、空振りが取れるようになりました」と成長ぶりを実感。さらに、尾形はその日の最速をツーシームで計測することもある。同監督は「真っすぐだけではなく、動かしながらでも強いボールを投げることができるピッチャーです」と話した。
尾形は卒業後、社会人野球チームでの野球継続を希望。その前にまずは、甲子園出場につながる春にするつもりだ。「夏まで残り少ないので、ストレートのキレを上げて、自分の武器をさらに磨いて、勝利に貢献していきたいです」と意気込んだ。甲子園への道も、将来も、自らの手で切り開いていく。【木村有優】
◆尾形陽聖(おがた・ようせい)2007年(平19)10月31日生まれ、宮城県気仙沼市出身。小1から面瀬小野球部で野球を始め、面瀬中では軟式野球部に所属。仙台育英では3年春の地区大会で初のベンチ入り。最速はブルペン計測で150キロ。185センチ、80キロ。右投げ右打ち。好きな野球選手は西武今井達也。
◆宮城の注目校 5連覇中の仙台育英は、豊富な投手力がカギを握る。昨秋の宮城県大会準Vの古川学園は地区大会2勝で第2シードを獲得。初戦は19日、利府-仙台商の勝者と対戦する。17日に初戦を迎える仙台一と仙台二は「ナンバースクール」対決。両校とも春夏通算3度の甲子園出場を誇る伝統校同士の一戦となる。