
ドジャース大谷翔平投手が5月6日に10号本塁打を放ち、今季メジャーリーグで10本塁打&10盗塁に一番乗り。チーム36試合目までの到達は、2005年ブライアン・ロバーツ(オリオールズ)以来20年ぶり12人目。日本人では最速の「10-10」到達となりました。2年連続「50-50」達成の可能性を考えたいと思います。
メジャーは19年に史上最多の6776本をピークに、本塁打が減少傾向にあります。逆に、23年からベース拡大と投手のけん制回数を制限して以来、盗塁が増加傾向にあります。それによって、昨年は大谷の前人未到となる「50-50」を筆頭に「30-30」が3人誕生。今年はさらに「30-30」をクリアする選手が出て来そうな状況です。
その中で大谷以外の注目は、現時点でナ・リーグMVPの最有力候補に挙がっているフェルナンド・タティス(パドレス)や、昨年史上5人目の「20-60」を達成したエリー・デラクルス(レッズ)。それに彼らと同じドミニカ共和国出身で、抜群のパワーとスピードを持つオニール・クルーズ(パイレーツ)です。
その他にも、今年3月に日本開幕戦でドジャースと対戦したカブスのカイル・タッカー、日本でも「PCA」コールが沸き上がったピート・クローアームストロングが注目の的。特に、今季のカブスは機動力野球で旋風を巻き起こし、同じチームから史上3組目の「30-30」コンビが生まれそうな勢いです。
過去の歴史を振り返ると、1987年に史上初めて複数、しかも一挙4人の「30-30」が誕生しました。翌88年にはホセ・カンセコ(アスレチックス)が史上初の「40-40」を達成。以来、パワーとスピードを兼ね備えたエリートの勲章である「30-30」、さらには「40-40」の時代が到来しました。
しかし、90年代後半メジャーでは人気回復のために「飛ぶボール」が使われ、マーク・マグワイア(カージナルス)やサミー・ソーサ(カブス)らを中心に再びホームラン時代が到来。その一方で盗塁は「失われた芸術」とまで言われるようになり、2013~17年は「30-30」に到達する選手が1人も出なくなりました。
それが23年の新ルール導入によって再び「30-30」が脚光を浴びました。ロナルド・アクーニャ(ブレーブス)の前人未到となる「40-70」を筆頭に、フリオ・ロドリゲス(マリナーズ)、フランシスコ・リンドア(メッツ)、ボビー・ウィット(ロイヤルズ)と一挙4人の「30-30」が誕生しました。
そして、昨年は大谷がこれまた前人未到「50-50」の偉業達成。ホセ・ラミレス(ガーディアンズ)は「40-40」まであと1歩と迫り、ウィットは遊撃手として史上初の2年連続「30-30」を記録。再び「30-30」の時代がやって来ました。
こうした「30-30」型の選手が増えることによって、ますます野球が面白くなり、それが試合の観客動員数やテレビの視聴率にも反映しています。今季ドジャースが開幕から14試合連続ホームで5万人以上動員したのを始め、メジャー全体が記録的な観客動員数をマークしています。今シーズン、大谷は投打二刀流復帰が大幅に遅れており、昨年同様に打者専念が続けば、ホームランだけでなく盗塁数の増加も大いに期待出来ます。また昨季前半の2番と違って、今年はシーズン開幕から不動の1番打者を務めており、それだけホームランを量産し、盗塁を企てる機会も多くなりそうです。
そうなれば、これから6月以降めっぽう強い大谷だけに「30-30」や「40-40」どころか、これまた不滅の大記録となる2年連続「50-50」達成も夢ではないと思います。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)