
<西武1-0ロッテ>◇9日◇大宮公園
モンテル、持ってる。極めてベタでも、そう言いたくなる試合だった。
支配下登録されてまだ3日目の西武モンテル外野手(25)がプロ初安打に加え、決勝点に絡んだ。
「確かに、持ってますね~」
緊張の一戦を終え、表情は和らぎ華やいだ。米国人の父を持つ、本名は日隈(ひぐま)モンテル。憧れの人に日本ハム新庄監督を挙げたことがある。
「ベルーナドームにヒグマが出たぞ」
そんな決めぜりふを狙っている。しかしこの日は年2度の大宮でのホームゲームだ。
球場隣の小動物園にはツキノワグマの「ヨリー」が暮らしている。どう猛さはあまりないけれど人気者だ。でもこの夜ばかりはヒグマの方に“ツキ”があったようだ。
0-0の5回1死二、三塁で打席へ。2球目を力なく打ち上げた。しかし相手一塁手がファウルエリアで落球。続く3球目のスライダーを食らいつくように空振りし、バットが手から離れてしまった。
しかし投球がショートバウンドし、捕手も前へポーンとはじく。そのすきに三塁走者源田が本塁突入。セーフ。先制点が入り、これが決勝点になった。
振り逃げもできたが、体勢が崩れ「そのまま(一塁へ)行こうとしたら源さん(源田)とぶつかっちゃうので、その場で止まって」ととっさの判断で、源田の走路も確保した。
だからモンテル、持ってる-。そんな冗談で終わらぬほどこの1勝はデカい。
91敗した昨季、4月9日に同じ大宮でロッテに完封負けし、そこから一気に7連敗。一気に泥沼にはまり、4月21日以降は一度も5位にさえ浮上できなかった。悪夢の始まりの地というのは、ベンチ内もファンも感じるところだ。
加えて、時間によっては渦を巻くような独特な風が吹く。ドーム球場を本拠地とする西武には、ホームゲームといえども圧倒的な心理的優位には立ちづらい。
だからこそ西口文也監督(52)は「メンバーを見てもらえば分かるように、守りのメンバーをそろえた形で」とスタメンを組み「いい流れを引き継ごう」と、水曜日の勝利時にも起用したモンテルも2試合続けて起用した。
故障から1軍復帰の源田をすぐに遊撃に置き、一方でかといって外崎を外し、二塁元山、三塁滝沢の布陣を組んだ。2人の好守も投手陣をもり立て、全てが結果的にはまった。
ロースコア覚悟の鬼門をそうして守り勝ち、これで大宮は2戦2勝。ロッテへの苦手意識もぬぐい、週末はリーグ屈指の投球をしている今井、隅田の両腕につなぐ-。運も味方したが、本来の筋書き通りでもある。去年とは明らかに違う。【金子真仁】