
ガンバ大阪の試合を観戦したファンの満足度が、劇的にアップしている。
Jリーグが実施した24年の「観戦者満足度調査」において、5点満点の総合満足度が、23年の4・04ポイントから4・40ポイントへ改善。23年はJ1の18チーム17位だったが、昨季は20チーム中3位と大躍進を果たした。
サッカークラブの運営は、どうしてもチームの勝敗や試合内容によって満足度が左右されてしまうものだが、G大阪は全試合平均の数値だけでなく、勝ち試合平均で4・66ポイント(全体4・59)、負け試合平均で4・04ポイント(全体3・71)、引き分け試合平均で4・18(全体4・08)と全ての結果において全体平均を上回る数字をたたき出している。残留争いに巻き込まれていた23年と、リーグ4位、天皇杯準優勝と躍進した24年での単純比較は難しいが、負け試合でも全体平均を0・33ポイント上回るようになっているのは見逃せない。
この変化は、24年に主に取り組んだ4つの施策によってもたらされた。
1つ目は場内のキャッシュレス全面導入、サイネージ刷新、階段の滑り止め導入といった「環境改善」。2つ目は場内グルメの企画とプロモーション強化、場外キッチンカーの店舗数大幅増などの「グルメ」。3つ目に場外に大型グッズ販売店舗を導入したり、モフレムショップの強化をした「グッズ(物販)」の改善。4つ目が光や花火の演出、OBやゲストを呼ぶ企画やマスコットキャラクターのモフレムを使った新企画など「エンターテインメント」。顧客の声に耳を傾けて取り組んだことが、奏功した。
スタジアム場外階段は、雨の降るナイトゲームでは「滑りそうで怖い」という声も出ており、滑り止め設置の際にはSNSでも「これはありがたい」と喜びの声が上がっていた。
多くの取り組みの中でも、特に満足度に影響を及ぼしたのが「グルメ」だった。顧客創造部の奥永憲治部長は「飲食は利用する人が圧倒的に1番多い。単純に2人に1人ぐらいが使っているところを改善するのは喫緊の課題だった。スタジアム内の店がどんなに頑張っても、観客2万5000人を超えると回せなくなってしまう。そこで場外を増やして、飲食イベントをやり出したら、売り上げも増えるようになった。影のできるバックスタンド側でやることで、暑熱対策にもつながった」と取り組みを説明。順番待ちの時間が減ることで、満足度アップにつながった。
簡単に取り組めることではないが、恒久的な満足度を上げていくための努力もしていく考えだ。パナソニックスタジアム吹田の弱点としては、最寄り駅から徒歩約15分のアクセスが挙げられ、顧客からの声も多いという。目の前にある商業施設「エキスポシティ」につながる歩道橋ができれば満足度改善につながると思われるが、行政も関わる話となって簡単には進められるものではない。それでも奥永部長は「中長期的な取り組みとしては、働きかけようとしている」と前向きに取り組んでいく考えを示した。
このような努力もあって、G大阪の今季の観客動員が好調だ。昨季の平均は2万6096人だったが、今季ここまでは2万7549と1試合あたり約1500人増加。ゴールデンウイーク中の4月29日京都サンガF.C.戦では3万620人を集め、5月3日湘南ベルマーレ戦も3万人近い観客が見込まれている。今季の平均目標だという2万8000人達成に向けて、5月31日の鹿島アントラーズ戦で「モフレムデー」を実施するなど多くの施策を行う予定。チームの結果に左右されながらも、着実に満足度を伸ばしているパナスタでの観戦体験は、これからもその価値を上げていくことになりそうだ。【永田淳】