
<西武2-1楽天>◇1日◇ベルーナドーム
サヨナラでの西武5連勝は、西武ベンチの「肝」の勝利でもある。
9回、ウィンゲンターが1点リードを追いつかれた。前日の試合でかかとを痛めた守護神平良が、この日はベンチに入っていない。
延長10回は誰が投げるか。首脳陣が選んだのは羽田慎之介投手(21)だった。
豊田清投手チーフコーチ(54)が振り返る。
「ラミレスもいたけれど、西口監督も『(羽田で)行こう』と言ってくれたので」
意見一致、羽田を送り出した。191センチ左腕は「和製ランディ・ジョンソン」とも呼ばれ、球威はチームトップクラスを誇る。
一方で制球が乱れることも少なくない。大暴投&大乱調のリスクはあるし、その前例もある。
バロメーターや判断基準はあるのか。豊田コーチは「まだ分からない。羽田はつかみきれない。(間隔が)空きすぎないようにとかいろいろ考えるけど、なかなか彼に当てはまるものがなくて…。トータルで見れば2週間前より良くなってる…そんな感じで見ていかないといけないのかな」と起用の正解をまだ見つけられていない様子だ。
そんな心配をよそに、この日の羽田はキレキレだった。ストライク先行。安打も打たれたが、わずか7球で延長10回を締めた。しかもボール球は1球のみ。
「ストライク、たまたま入ったね」
豊田コーチは冗談交じりでそう言う。裏を返せば、コースに決まれば簡単には打たれない投手…そういう投手でもある。
当の羽田は劇的な幕切れで勝利投手にもなり、そんなチームの空気に「楽しいっすよね、やっぱ、勝つと」と表情も楽しそうだ。
「今日は試合前に体のバランスとかチェックしながらドリルもしっかりやって。いい感じで入れたと思います」と振り返る。
成功も失敗もある。その中で大事にしたいことは。
「もちろん優勝を目指すこと。あとは5年後とか先を見て、いま何が必要か考えたり、しっかり記録を付けたり。ちゃんと積み重なるようにしています」
奔放なキャラクターではあるものの、プロ野球選手としての生きざまは丁寧だ。着実に活躍の土台を築こうと励んでいる。
その上での今年の目標は「タイトル目指すのと、勝ちパターンで投げること。160キロ出すのも、もちろんです」と頼もしい。
前日の20歳山田の1点差7回への抜てきに続き、この日の21歳羽田も大正解だった。ベンチの決断の大勝利だ。西武は昨季、延長戦15連敗の汚名にまみれた。若手投手が踏ん張って延長戦勝利につなげた上での5連勝は、とても価値が大きい。【金子真仁】