
<阪神4-1巨人>◇25日◇甲子園
ちまたで騒がれている「魚雷バット」だが、プロ野球界でも使用する選手がちらほらと出てきた。そんな矢先、さっそく注目したのが、初回2死一、三塁で迎えた阪神の大山の打席だった。持っているのは、まさしく「魚雷バット」だった。
試合展開的に見ても、重要な打席だった。犠牲フライでも1点という場面で、4番の佐藤輝が空振り三振。そして大山の打席だった。初球は内角の低めのフォークを空振りしたが、スイングスピードは速かった。そして2球目は外角真っすぐを見逃してボール。3球目は内角に狙った真っすぐが逆球になり、待っていたかのように逆方向にはじき返した先制のタイムリーだった。
このヒットの打ち方は見事だった。逆球ではあるが、大山は外角球を逆方向に打つ意識があったと思う。魚雷バットの弱点は外角球を強く打てないことだと言われているが、調子が悪いときはバットのヘッドが返りやすくなってしまう大山の弱点を補ってくれる。だからしっかりと押し込むようにミートし、ゴロにならずに低いライナーになった。
3打数でヒットは1本だけだったが、四球もあり、2打席目はタイミングを外されたカーブをサードライナー。3打席目は内角やや高めの真っすぐを打ってレフトフライ。いずれも紙一重のアウトだった。
大山のスイングの軌道や打者としてのタイプ的には「魚雷バット」が合いそう。ヤンキースで本塁打が量産され話題になったが、バットの形状を見ると、飛距離を伸ばすというより、操作性を重視したタイプのバットだろう。大山は長打力が期待されるタイプではあるが、それ以上に期待されるのは勝負強さ。3番の森下も4番の佐藤輝も、1発のある打者だがムラもあるタイプ。その後ろを打つ大山が粘り強く打てる打者になれば、相手チームへの脅威は増す。操作性がいいバットが武器になる。
そして大山は難しい球に対してヤマを張ってホームランするタイプではなく、甘く入った失投を逃さずにホームランにするタイプ。飛距離を重視していない魚雷バットだが、このタイプなら極端に長打が減るとも思えない。まだ使用した期間は短いだろうが、実戦に使えるというメドが立ったから試合で使っているはず。魚雷バットの相性の良さを、自分自身で感じているのだと思う。今後の大山のバッティングに注目したい。(日刊スポーツ評論家)