
<オープン戦:西武2-3阪神>◇12日◇ベルーナドーム
阪神島田海吏外野手(29)は不退転の覚悟で剛速球、そして外野スタメン争いに食らいついた。三塁ベース上で立ち上がると、小さく右拳を突き上げた。まだ肌寒い3月中旬のオープン戦で際立つ気迫が、見る者の胸を一気に熱くさせた。
「外野は打たないと、というのはずっと思っていた。前の2打席でやられていたので、絶対に打ち返したいなと思っていました」
主力中の主力、近本が同行していない敵地西武戦。「1番中堅」スタメン起用になんとしても応えたかった。2打席目までは今井の前に外野フライ2本。3打席目は結果と内容の両立を貪欲に追い求めた。2点を追う5回2死一、二塁。2ボールから右腕甲斐野の低め155キロ直球を狙い澄ました。コンパクトに振り抜き、ライナー性の飛球で右中間に2点三塁打をはずませた。
「あれより打球が上がらない打撃練習をやっている。あれより上がると良くない打球と認識して練習している。ライナーというのを引き続きやっていきたい」
冷静に自身の特性を理解している中堅は頼もしい。藤川監督は「非常に思いきり良くいった。1番に入って非常にいい1本」と納得顔。「昨年の秋からやってるところでしょうけど、非常にいいモノは見せてくれている。1つの大きなチームとして動いていく中では心強い存在にはなってくる」と貴重なピースである事実を隠さなかった。
外野レギュラー枠はすでに2つ埋まっている。中堅近本、右翼森下は不動。左翼も前川がヘルナンデスらライバルを突き放している。とはいえ、シーズンは長い。有事やDH制の交流戦も踏まえれば、外野全ポジションを守れる島田の存在はありがたい限りだ。
「残りの3打席はあまり感覚が良くなかった。1本に満足せず、もっともっといい内容、いい打席を送れるようにやっていきたい」
おごらず、浮かれず。大卒8年目が藤川阪神のジョーカーに名乗りを上げている。【佐井陽介】