
<オープン戦:日本ハム1-0中日>◇9日◇エスコンフィールド
日本ハム伊藤大海投手(27)がオープン戦ならではの“ワガママ投球”で開幕へ向けた収穫を得た。中日戦(エスコンフィールド)の6回から登板。2イニング目の7回にはバッテリーを組んだ同学年の郡司のサインに何度も首を振り、意図的な“サイン間違い”で投球する場面も。試したいことを貫いて3回47球を投げて無安打無失点5奪三振。先発が内定しているホーム開幕戦の4月1日ソフトバンク戦へ向けてきっちりステップを踏んだ。
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伊藤は試合後、申し訳なさそうに言った。「今日は僕のワガママだったんで…」。7回2死無走者。打席には現役ながら名球会入りを果たしている大島がいた。カウント2-2からの6球目。郡司からのサインに首を振り、また首を振り…。5度ほどサインが合わなくて1度プレートを外した。再びサインをのぞき込むが、また首を振り、内角を指示するかのように顔も動かし…最後はうなずいた。
投げたのは内角へのカットボールだったが、実は「真っすぐのサインで(うなずいて)そのままカットボールを投げました」。捕球した郡司が苦笑いを浮かべていた理由は確信犯の“サイン間違い”だったから。直球系と呼ばれるカットなら「真っすぐのサインでインコースでも…捕ってくれるだろうって」と郡司を信頼するからこその“ワガママ”をしてまで左打者への決め球としてカットボールが有効かを試したかった。
もちろん郡司の配球に納得できなかったわけではない。「1発目のサインが出た時は僕もそれ(決め球としてカットボール以外の球種)が来るだろうなと思っていた。ただ、僕のワガママ。普通に考えたら(郡司)裕也が出していた3、4パターン(の球種を選ぶところ)。僕が、あのタイミングで内角にちょっと突っ込んでみたかっただけです」と狙いを明かした。
結果は見送られてボール球だった。本当は「できればスイングさせたかったけど、あれだけ首振ると打者も警戒するので」と苦笑い。その後、郡司には「僕は球種のサインがやっぱ多いので…『ちょっと(サインが)飛んじゃって、ごめん』って言いました」と確信犯であることは隠して言い訳したそうだが、取材対応の際は「ほんとに僕のワガママで裕也を困らせてしまった」と“謝罪”した。
多彩な球種を持つからこそ、いろんな配球パターンを試して投球の幅を広げる。結果が問われないオープン戦だからできる調整で「いろいろ試せて良かった」と収穫あり。4月1日ソフトバンク戦まで調整登板は残り2試合。「細かいところをどんどん詰めていけたら」と細部を突き詰めていく。【木下大輔】