
<オープン戦:パドレス-ガーディアンズ>◇8日(日本時間9日)◇アリゾナ州ピオリア
【ピオリア(米アリゾナ州)8日(日本時間9日)=四竈衛】パドレスのダルビッシュ有投手(38)がガーディアンズ戦でオープン戦初登板し、3回途中4安打2失点3奪三振と上々のスタートを切った。日米通算21年目にして投球フォームを改良。最速95・6マイル(約154キロ)をマークしたほか、新球「パワースライダー」で空振り三振を奪うなど、変わらぬ貪欲な姿勢を見せた。故障離脱などで昨季7勝に終わった大ベテランが、キャンプ中盤を迎え、順調に仕上がってきた。
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日米通算で史上最多タイとなる203個の白星を積み上げても、ダルビッシュは次なる可能性に挑んでいた。2回2死。右打者ハフをスイーパー、ツーシームで0-2と追い込むと、新しい引き出しを開けた。外角高めで鋭く沈む時速86・9マイル(約140キロ)の新球「パワースライダー」にバットは空を切った。
昨年まで投げていた同じ球速帯のカットボール、スライダーを改良。「ちょっと変化の仕方を変えて、もうちょっと縦変化を多くした。いい球は投げていたけど、あまりに外からだと打者が振ってくれなかったりしたので、調整が必要かなと思います」。この日は3球テストし、ボール、二飛、空振り。昨年のポストシーズン以来となる実戦にもかかわらず、いとも簡単に新球の手応えをつかんでしまうのが、9、10種類とも言われる変化球を操る「マジシャン」ならではだった。
セットポジションからの投球フォームも改良した。昨年までは、左足を2段モーション気味に上げて「タメ」を作るパターンが主流だったが、一気に引き上げる形に修正。右足の股関節を絞り、マウンドの傾斜を利用して重力に準じて体重を移動する動きにたどり着いた。「今年で39歳。今までみたいに筋肉を使って投げていくと限界がある。若かったら大丈夫ですけど、骨格、体のメカニズムとかを使った投げ方にしていきたいと思っています」。無駄な動きを省き、体への負担が軽減すれば、リカバリーにもプラス。25年型だけでなく、旧フォームやクイックなどを織り交ぜる策も考慮するなど、シーズンへの準備にぬかりはない。
この日は、今季初実戦に集中し過ぎたあまり、試合前の昼食を取り忘れるほどだったが、それも愛嬌(あいきょう)。昨年の地区シリーズで敗退した際、野球選手として「人生で言うと死ぬ間近。死にたくない」と笑わせたが、その思いは変わっていない。「死なないためにどうやって生き延びるかを考えなければ、自分は投げていけないので、もがいているだけです」。パ軍との契約は28年までで、あと4年。新球、新フォームだけでなく、練習内容も含め、向上心あふれるダルビッシュの模索は、まだまだ終わりそうにない。