
侍ジャパン山本祐大捕手(26)が、日本の扇の要を担う。大阪・舞洲の室内練習場で4日、「ラグザス 侍ジャパンシリーズ 2025 日本VSオランダ」(京セラドーム大阪)の前日練習に参加した。山本は昨年9月15日広島戦(マツダスタジアム)で死球を受け、右尺骨を骨折。その際の投手だった常広羽也斗投手(23)と日の丸を背負って再会し、お互いに謝罪し和解。昨秋のプレミア12は負傷の影響でメンバー入りはならなかったが、来春WBCの正捕手候補の1人として、侍ジャパンをけん引していく。
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包み込むような、穏やかな目だった。山本が1年ぶりの侍ジャパンで同僚たちと積極的に交流した。28選手中、初選出が20選手。「まだ1日だけですけど、同級生も多いですし、年下の選手もいる。あとは常広くんと話せたので、すごく良かったと思います」と柔らかい表情を浮かべた。
さかのぼること約半年前、昨年9月15日広島戦(マツダスタジアム)。プロ初登板初先発の常広に死球を受けた。右尺骨骨折の重傷を負い、ベンチ裏で涙した。日本シリーズはベンチ入りも、出場はないままシーズンを終えた。同11月のプレミア12も召集は見送られ、今も右腕には約10センチのプレートが埋め込まれたままになっている。
とはいえ、真剣勝負の世界。覚悟は常にできている。「初登板でむしろ申し訳ないなと。僕が当たって折れてしまったせいで、周りからの言われ方もあったと思いますし、真剣勝負なので、すごく申し訳ないなと。謝れたので良かった」と逆謝罪した。
前日3日の合流時には、常広から声をかけられた。「すごく気まずそうに『ごめんなさい、すみません』と謝ってくれたんですけど、むしろごめんね、と」と、お互いの謝罪で和解が成立。侍ジャパンではバッテリーとして、リーグ戦では敵として相まみえる。「真剣勝負なので、また当たることもあると思いますけど、わざとやっているわけではない。そういうのも背負って打席に立たないといけない。引きずらずに真剣勝負してくれたら」と気遣った。
前日練習では5日に先発する宮城とブルペンで初バッテリーを組み、スタメンマスクへの準備は抜かりない。「このユニホームを着てやる思いはプレーで証明したい。2試合だけですけど、WBCへの足掛かりにできれば」と来年3月の大舞台を見据えた。ドラフト9位指名からはい上がった苦労人が、優しく、力強く、日本の投手陣を引っ張る。【小早川宗一郎】