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米フロリダ州でキャンプを張る日本人投手を、日刊スポーツで評論家を務める上原浩治氏(49)が視察してきました。
自らの経験をもとに見た投手の動きをチェックし、日本とは違うキャンプを紹介。注意点までを指摘しました。上原氏のインタビューは、TBS「サンデーモーニング」で放送。3月2日にオリオールズ菅野、ナショナルズ小笠原、同9日にはレッドソックス吉田、フィリーズ青柳を予定している。
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例年、メジャーのキャンプを視察していますが、今季はフロリダでやっている日本人投手の所へ行ってきました。
今季からメジャー挑戦する小笠原、青柳、菅野。そして復活が期待される前田です。私の感想を紹介しましょう。
真っ先に「すごいな」と感じたのは、前田です。まだ短いイニングしか投げていませんが、実戦での登板でした。当たり前ですが、ほとんどの選手が仕上がり途中でしたが、1人だけ仕上がっている状態。もともとメジャーでやれる実力は持っているし、昨年は手術明けで思うようにいかなかった悔しさがあるのでしょう。今季にかける気持ちが伝わってくるようなボールを投げていました。
小笠原もよく見えました。実戦では10球も投げていませんが、順調に仕上がっているようです。メジャー契約で来ているだけに、自分なりの調整はできます。メジャー球やこちらのマウンドを苦にしているような感じもなかったです。
菅野も実戦で投げているところは見られませんでしたが、楽しそうにやっていました。練習での体の動きもよく見えました。
私も経験がありますが、年齢がいくと、オフのうちにある程度仕上げていかないとシーズンに間に合いません。そのため、シーズンが終わっても1週間程度で体を動かし、ボールも投げます。
年が明ける前にはブルペンにも入っていました。菅野もハワイの自主トレで、だいぶトレーニングしてきたようです。日本での実績は十分だし、本来の実力を発揮できれば十分にやってくれるのではないでしょうか。
ちょっと心配なのは、青柳でしょう。これは本人の実力以外で心配なところなんですが、メジャー契約できていない点です。
ほとんどの選手がメジャー契約で、本人の同意がなければマイナーに落ちません。チームによって違いはありますが、マイナー契約でメジャーに上がれるのは2~3人ほど。投げられる機会も少ないし、ゆっくりと自分のペースで調整できず、結果も求められます。実戦での投球は見られませんでしたが、頑張ってもらいたいと思っています。
こちらのキャンプは全体練習が2~3時間で、あとは遊ぶなり、練習するなり自由にやれます。宿舎も個人個人がバラバラ。朝と昼間は用意された食事で済ませる選手が多いのですが、夕食は自由です。
みんな自分でホテルなり家を借りて過ごします。開放感もあり、はじめてキャンプを過ごす日本人選手には新鮮な雰囲気の中でやれます。みんなが楽しそうにやれるのも、そういうムードが影響しているのでしょう。
落とし穴があるとすれば、休日がほぼないという点です。練習時間は短いので、毎日の疲労感はないのですが、ジワジワと疲労が蓄積します。
今は個人でトレーナーがいるので昔ほどしんどくはなりませんが、自分でも気が付かないうちに疲労がたまり、ケガにつながりやすくなります。その辺を気をつけ、みんなが結果を出して日本野球のレベルの高さを証明してもらいたいと思っています。(日刊スポーツ評論家)