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<富士大強さの秘密に迫る>
昨秋ドラフト会議で育成含め6人が指名を受けた、北東北大学野球リーグの富士大(岩手)の今季は「チーム力」がカギとなる。本年度は過去最多となる66人の新入部員を迎える予定。主将に就任した松坂映杜内野手(3年=弘前学院聖愛)を中心に「常勝軍団」をつくりあげる。エース候補には実戦経験もある角田楓斗投手(2年=東奥義塾)が名乗りを上げ、先輩たちが成し遂げられなかった「全国制覇」に挑む。20年から指揮を執る安田慎太郎監督(40)には指導法を聞き、強さの秘密に迫った。【取材・構成=木村有優】
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最強世代を超える。松坂主将の闘志は燃えていた。昨年11月、明治神宮大会初戦で創価大(東京新大学)に敗れ、新チームが始動。選手間で話し合い、主将に選ばれ「認めてくれたうれしさと同時に、『やらなきゃいけない』という責任感も生まれました」ときっぱり。「先輩たちが成し遂げられなかった『全国制覇』を目指したいです」と気合十分だ。
目指すは山沢前主将だ。松坂にとって野球人生で初の主将経験。プロへ同校最多6人を輩出し、歴史が変わった直後のチームに「正直、プレッシャーはすごくありますし、4年生が抜けたことで勝てるのかも不安です」と吐露。それでも、前主将から電話で助言を受け、手探りながら歩んでいる。松坂は「(山沢)太陽さんのような主将になりたいです」と一番近くでみてきた先輩を目標に挙げた。「誰よりも練習をしますし、野球に対する熱も誰よりもありました。行動でも言葉でも示してくれる主将でした」と理想像を語った。
主将だけではない。磨いた守備力を武器にプレーでもけん引する。松坂には忘れられない一戦がある。23年秋季リーグ最終節。八戸学院大(青森)とのタイブレークにもつれこんだ接戦に10回から守備固めとして出場。だが2失策し、サヨナラ負けを喫した。「その負けから守備に限らず、野球に対する姿勢が変わりました」。2度と同じ思いをしないために、どんな時も手を抜かず、より一層野球と向き合うようになった。「主将として、選手としてチームに貢献するプレーをしていきたいです」。泣いても笑ってもラストシーズン。頂点の景色をみて、花道を飾るつもりだ。
◆松坂映杜(まつさか・えいと)2003年(平15)7月12日生まれ、青森県弘前市出身。小1時から野球を始め、弘前BBCでプレー。中学時代は弘前シニア所属。弘前学院聖愛では1年秋からベンチ入りし、富士大でも1年春からベンチ入り。165センチ、72キロ。50メートル走6秒4。右投げ右打ち。好きな野球選手は阪神木浪聖也内野手。