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ヤクルトは19日、球団マスコットの「つば九郎」を支えてきた球団スタッフが永眠したと発表した。
関係者によると、肺高血圧症のためという。球団は同マスコットの活動をしばらくの間、休止する。1994年デビュー以来、「つば九郎」は毒舌の中にユーモアが混じる「フリップ芸」や「空中くるりんぱ」で人気を集めた。公式ブログは3日を最後に更新が途絶えており、6日には体調不良により長期休養が発表されていた。
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つば九郎の担当者が亡くなった。ヤクルトは19日夜になって「球団からのお知らせ」と公式ホームページを更新。「これまで、つば九郎を支えてきた社員スタッフが永眠いたしました。球団マスコットとして、ここまで育ててくれた功績に感謝と敬意を表します。体調不良の発表以来、温かい励ましのお言葉をたくさん頂戴し、誠にありがとうございました」と、悲しい知らせを発表した。
つば九郎は今月1日に沖縄・浦添で始まった1軍キャンプに同行していた。髪に金色のメッシュを入れた山田の囲み取材に乱入し「めっしゅにあってるよ~!」と、得意のフリップ芸を披露。関係者によると、担当者は4日に沖縄から帰京する際に空港の搭乗口で倒れて心臓マッサージを受け、そのまま豊見城市内の病院に入院していた。高津監督ら親しい球団関係者も見舞いに訪れていたという。1度は回復の兆しを見せたが、16日に永眠した。
名物の「フリップ芸」は毒舌の中にユーモアが入り交じっていた。時に時事ネタも交えながら、愛らしいルックスに似つかわしくない姿で、球場を笑いに包んだ。5回終了時のイニング間には帽子を高く放り上げる「空中くるりんぱ」が恒例のパフォーマンスに。マスコットでは異例の契約更改も実施し、1月には現状維持の年俸6万円、ヤクルト1000飲み放題でサイン。ネタや毒舌も野球への愛にあふれ、憎めないキャラだった。
球団は、つば九郎の今後について「しばらくの間休止となることをお知らせします」とした。94年4月9日阪神戦にデビューし、22年8月5日巨人戦では同2000試合出場を達成するなどファンに愛された。球団の枠を超え、球界の人気を支えてきたマスコット界の巨星。やすらかに。
◆つば九郎 94年4月9日阪神戦(神宮)でデビューした。名付け親は千葉県在住(当時)の小学生。12球団の主要マスコットで唯一、ユニホームを着ていない。09年に「つば九郎のおなか」を出版。12年には「つば九郎音頭~おとなのじじょう~」でCDデビュー。妹の「つばみ」がいる。今年1月28日の契約更改では年俸6万円+ヤクルト1000飲み放題で合意していた。背番号2896。右投げ右打ち。
◆肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)肺動脈の流れが悪くなることで、心臓と肺に機能障害が起こる病気。原因はさまざまで、肺血管や心臓、肺に何らかの異常が起きると、肺動脈の血液の流れが悪くなり、肺動脈圧が上昇することがある。肺動脈圧が高くなると、肺動脈に血液を送る心臓の右心室にも高い圧力がかかり、心臓の右室が肥大、機能低下して右心不全が進む。息苦しさや息切れ、体のだるさ、足のむくみ、失神、血痰(けったん)などの症状があらわれる。治療せずに放置すると、さらに肺高血圧と心不全が進行し、数年以内に命を落としてしまうこともある。