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<練習試合:阪神6-0楽天>◇15日◇沖縄・宜野座
若虎の進化がとまらない。阪神前川右京外野手(21)が技ありの3ランで、藤川球児監督(44)体制初の対外試合でチームを快勝に導いた。15日の練習試合・楽天戦戦(宜野座)に「5番左翼」で出場。5回に実戦第1号となる右翼越えの3ラン本塁打を放った。チームは10安打6得点を挙げ、投手も完封リレー。王座奪回を目指す新生タイガースが、最高のスタートを切った。
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宜野座がドッと沸いた。2-0で迎えた5回2死一、二塁。外角に浮いたパームを前川が泳ぎながらもうまく捉えた。昨年までのプロ2年で100試合登板の楽天渡辺翔の代名詞をはじき返した打球は、風にも乗って右翼方向に伸び、防球用のネットにズドン。「真っすぐ待ちで、パームを前に出ずに打てた」。今キャンプ最多の1万1000人が来場し、熱烈虎党の俳優渡辺謙、パリ五輪レスリング金メダリスト鏡らも見守った注目ゲームで若虎が結果を出した。
「もう全部それでやった。岡田さんに言われた助言はそのまま生きました」
13日にはブルペンの打席で投手のボールで目慣らしする練習の際に、前監督の岡田オーナー付顧問から、タイミングの取り方などのアドバイスを受けた。「ひと呼吸置かないようにする」という差し込まれないための助言があった。第1、2打席は遊飛と二ゴロで凡退。「体ごと突っ込んでいた。何も対応できないという感じだった」と反省したが、そこから修正。直球を待ちながらも変化球に対応した。
昨季のプロ初本塁打を含む4本塁打はすべて直球をはじき返したアーチだった。変化球を捉えた1発は進化を感じさせる放物線になった。試合中に修正力を発揮したことも期待大だ。日刊スポーツで宮本慎也氏との対談で「いかに伸ばしてあげられるか」と話していた藤川監督も高卒4年目の前川について「不安なくキャンプを送れている」と評価した。
「結果的にホームランになったので、結果としていい」。そう話したが、ダイヤモンドを1周する前川に笑顔はなかった。「まだまだ全然だと思う。また明日さらによくしたい」。左翼の開幕スタメン争いに奮闘する若虎が、アピールに大成功。レギュラーの座をつかみ取った先のさらなる飛躍も目指し、鍛錬を続ける。【塚本光】