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真価が問われる25年、ファーストスイングから追い風が味方した。DeNA山本祐大捕手(26)が宜野湾キャンプ第2クール3日目の8日、今季チーム初実戦で躍動した。3回無死一塁、森唯の直球を実戦初スイングで左翼フェンスの上の防球ネットまで運んだ。昨季ゴールデングラブ、ベストナインを受賞し、3月の侍ジャパンの最終候補メンバーにも選出。球界を代表する捕手としての地位を確立しつつある26歳が今季の“チーム1号”アーチを決めた。
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山本の左翼への放物線が宜野湾の海から吹き上げる強風に乗った。3回無死一塁、森唯の初球直球をコンパクトに振り抜いた。ライナー性でグングン伸びて左翼フェンスの上の防球ネットを直撃。第1打席は1度もスイングすることなく四球だったため、今季の実戦ファーストスイングで“チーム1号”となる豪快2ラン。「多分誰も僕が打つと思ってなかったと思う。周りから風(のおかげ)だって言われましたけど、今日は(風の)手助けがあったので、次は誰もがホームランという打球でほめられたい」と決意を込めた。
復活を印象づける上で、これ以上ない結果だった。実戦出場は昨年9月15日広島戦(マツダスタジアム)以来、約5カ月ぶり。死球で右尺骨骨折を負い、ベンチ裏で涙した、あの試合。すでに制限なくプレーしているが、いまだに右腕には約10センチのプレートが埋め込まれたままになっている。
取り除くには手術が必要になるため、少なくとも今季終了後まではプレートとともにグラウンドに立つ予定。「だいぶ慣れましたし、それにも合わせていかないといけない。今の体に合わせるのが野球選手として大事。言い訳はしないです」と語気を強めた。
今キャンプ最低の気温12度と強風が吹きつける海沿いの宜野湾。長年、キャンプ地として訪れてきた70歳の田代野手コーチも「今までで一番寒い」と嘆く中、体感温度をぐっと押し下げた強風が山本の味方に付いた。体重も昨年の公称87キロより7キロ増の94キロにアップ。1つのテーマに掲げる長打力アップをファーストスイングから体現した。「今年やるぞって気持ちで来ている。もう今日のことは忘れて謙虚に明日から取り組めれば」。日本屈指の捕手へ-。25年の山本に追い風が吹いている。【小早川宗一郎】
▽DeNA三浦監督(山本の本塁打に)「しっかり捉えてたので風がなくても入ったと思います。練習でもノックでも動けているので、残りのキャンプを順調にやってくれれば」
◆山本の歩み 18年にドラフト支配下最下位となる9位でBC・滋賀から入団。23年に東と最優秀バッテリー賞を受賞するなど強肩強打でブレーク。昨季はさらに成長し、3割近い打率と強肩で球団では98年谷繁以来となるゴールデングラブとベストナインに輝いた。
◆捕手争い DeNAの捕手陣は12球団でも屈指のハイレベルな争いが繰り広げられている。34歳の戸柱は、昨季山本が負傷離脱してから獅子奮迅の活躍ぶり。CSではMVPに輝き、日本シリーズでも全試合マスクをかぶって26年ぶりの日本一をたぐり寄せた。20歳の松尾も豪快な打撃が魅力で将来のチームを担う存在として期待される。他にも35歳で経験豊富な伊藤や若手の益子、育成ながら宜野湾キャンプメンバーの九鬼らが控える。