<佐井注目>
阪神の藤川球児監督が年明け早々、25年型の打順構想を虎番に明かした。
クリーンアップ3人はおなじみの大卒ドラフト1位トリオ。ただ、岡田彰布前監督が指揮を執った24年型とは順番が異なる。3番森下翔太、4番大山悠輔、5番佐藤輝明が3番佐藤輝明、4番森下翔太、5番大山悠輔に変更される新プラン。目にした瞬間、3人の中で最年長となる兄貴分の言葉を思い出した。
昨季のいつ頃だったか、大山と打順談議を交わした記憶がある。
チーム18年ぶりのリーグ優勝を達成した23年レギュラーシーズンは「全試合4番スタメン」を達成。これは球団では09年金本知憲以来14年ぶり5人目、生え抜きプレーヤーに限れば85年掛布雅之以来38年ぶりの偉業だった。プロ1年目の17年9月に阪神第101代4番に抜てきされて以来、苦闘に次ぐ苦闘の末にようやくつかんだ定位置。当然こだわりがあるだろうと思いきや、主砲は意外な反応を示したのだ。
「いや…僕自身は6番でもいいぐらいなんです。たとえば(前川)右京が前にいて、僕が後ろでカバーするような感じとかでも…。僕が若かった時は後ろの福留さんに何度も助けてもらいましたから」
もちろん、「虎の4番」へのプライドは胸に強く秘めている。打って勝てば神様、打てずに負ければ大戦犯。想像を絶する重圧を「やりがい」と表現し、「活躍した時の達成感はすごくある場所」と力を込めていた。一方で、チームが勝つためにベストな打順が4番でないのであれば、後輩の助けになるのであれば、違う打順も喜んで全うする。大山らしい考え方だった。
25歳シーズンで初めて開幕4番を任された19年、真後ろでサポートしてくれた5番打者が当時42歳シーズンを迎えていた大先輩、福留孝介だった。
「福留さんには『最後は俺がなんとかするから』みたいな雰囲気があって、本当に助けられました。次は自分がそうなる番かなとも思っているんです」
大山は昨季、近い将来訪れるであろう立場をすでに予感していた。ならば25年、新指揮官がイメージする打順にもすんなりマッチするのではないだろうか。
藤川監督は新打順構想を明かした際、「4番はチームの大きな役割だと言っていますけど、私の中ではもっと深い気持ちで見ていて、大山で待ち構えたいというのが自分のプラン」とも説明している。
4学年下の佐藤輝、6学年下の森下が勢いよく前を走り、経験豊富な大山が迫力たっぷりに登場する。実に興味深い25年の理想型。兄貴分の頼れる「どっしり感」にも注目したい。【野球デスク=佐井陽介】