巨人の伝統を一本気で継承する。山口寿一オーナー(67)が、昨年12月19日に死去した渡辺恒雄さんの遺志を引き継ぐ。7日、都内ホテルで開催された時事通信社の新年互礼会に出席。球団オーナーを長らく歴任し、球界に絶大な影響力を持った先人との最期を明かした。長嶋茂雄、王貞治、松井秀喜と代表格のOBの名前を挙げ“オールジャイアンツ”を強調。今季はリーグ2連覇、その先の日本一を厳命し「真の喜び」を味わうべくシーズンにすることを誓った。
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その一点だけを見つめた。山口オーナーは間髪入れずに口にした。「(リーグ)連覇をして、それで日本一をとると。やっぱりペナントレースに勝って日本シリーズに出て、日本一になる、というところまで達成しないと、本当の喜びは来ないと分かりましたからね。そういう真の喜びをつかむということが唯一最大の目標です」と言い切った。
訃報は受け止め、引き継ぐ覚悟を示した。昨年12月に読売新聞グループ本社の代表取締役主筆の渡辺恒雄さんが都内の病院で息を引き取った。98歳だった。「亡くなる数日前まで話をしていましたけどね。最後の方はもう肺炎で、喉をやられていたので、なかなか声が思うように出なかったんだけど、それでも声絞り出して話してましたけどね」と病室での様子を明かした。
渡辺さんは巨人軍を溺愛した1人だった。「今年はリーグ優勝はできたので、そこは喜んでくれていたと思います。11月の下旬までは特に病気であったわけでもないですし、会社にも出てきていた。その頃に野球の話をしとけばよかったなと」。12月に入って容体が悪化するまではいつも通りの生活を送っていた。急な別れだっただけに心残りはある。
偉大な功労者が培ってきた伝統を継承していく使命がある。90年の歴史を、100年、さらにその先へとつないでいく。「ここに至るまではいろんな人がさまざまな思いがある。長嶋さんも王さんも当然含まれる。それらが1つの方向を向いていたと思うんですよね。創設時からずっと一貫してね。今後、我々が受け継いで志を受け継いで、さらに発展させていかないといけないです」と胸に刻んでいる。
年始のテレビ特番でイチロー氏と対談した松井秀喜氏が、「10年後の自分」というテーマで「長嶋さんが喜ぶことはしたいなと。元気なうちに自分の元気な姿を見せたいなという気持ちはありますけどね」と語った。対談の内容を見聞きした山口オーナーは「そういうことを言ってくれてんのかなと私は受け止めてはいますけれども。メジャー行ってからも長嶋さんが随分気にかけていてね。親子みたいなものでしょうからね」と言った。将来的な松井監督の可能性については「ねえ、そういう風になるといいですよね。ただ、今は阿部監督に頑張ってもらう」と締めた。
その伝統は勝つことでより深く、強くなる。【為田聡史】