日本ハムの規格外ルーキーが、波乱の入寮劇を乗り切った。ドラフト1位の柴田獅子投手(18=福岡大大濠)が6日、羽田空港で迷子になり、何とか見つけたタクシーで千葉・鎌ケ谷の勇翔寮へ飛び込んだ。
地元福岡からの単身入寮で訪れたハプニングにも、持ち前の「負けず嫌い」が着火。投手で最速149キロ、打者で高校通算19本塁打を誇る逸材が、グラウンド外で大物感を漂わせた。
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午後1時半、勇翔寮の前に止まったタクシーから柴田が登場した。同期入団の高校生6人で唯一の単身入寮。福岡・飯塚からの長距離移動にも「1日でも早く入寮できたら、と思っていた。できるだけ早く着いてほしいと思っていた」と涼しい表情を見せた。ところが羽田空港からの道のりを尋ねられると「もう分からなくなったので、タクシーで来ました。羽田からです」と仰天エピソードが飛び出した。
波乱の1日は出発から。午前8時20分発の便に搭乗するために福岡空港へ。だが、スマートフォンでの搭乗券表示に苦戦し、保安検査場の通過は締め切り2分前。羽田空港到着後は電車を乗り継いで新鎌ケ谷駅を目指すつもりだったが、空港内でスーツケース、マットレスとともにさまよった。同空港は人生3度目だが「携帯で調べてもわからない。誰に聞いたらいいかもわからない…。今まで見た光景とは違いました」と、焦りに焦った。
完全な迷子状態だったが、柴田は諦めなかった。おみくじは大吉が出るまで引き続ける負けず嫌い。端から端まで黙々と30分歩き、ついにタクシー乗り場を発見した。「諦めなかったです」。そこからは思い切って勇翔寮までタクシーに乗り、1万7000円を支払った。運転手が鎌ケ谷出身というミラクルにも恵まれ、エールと鎌ケ谷観光ガイドを受けながら勝負の地へ滑り込んだ。球団関係者によると、柴田のような登場は「記憶にない…というか、いないと思います」という。
18歳の高校生には高いハードルを飛び越え、自身の足でプロのスタートラインに立った。8日からは新人合同自主トレが始まる。勝負事のモットーは「勝ち逃げみたいな感じ。負け続けても最後に勝てば良い」。まずは入寮で最後に勝った。【黒須亮】