日本ハム新庄剛志監督(52)が林孝哉ヘッドコーチ(51)との“約束”を破った夜があった。
29日、CSフジテレビONE、FODで放送、配信されたドキュメンタリー「球界のアンチテーゼ~新庄剛志と北海道日本ハムファイターズ『3年目の約束』~」の後編が放送され、林ヘッドコーチがインタビュー出演。今季の印象的な新庄監督の采配について振り返った。
「8月の楽天戦だったです。(清宮)幸太郎がアウトカウントを間違えて、1アウト一塁で飛び出しちゃったんですよ。外野フライで、ダブルプレーになっちゃって」
8月6日楽天戦(楽天モバイルパーク)の3回。死球で出塁した清宮幸太郎内野手(25)がボーンヘッドを犯したシーンだ。
「野球っていうのは、していいミスはないんですけど、許されるミスと絶対に許されないミスがあると思うんですよ。アウトカウントだったり、サインミスというのは絶対に許されない方のミスだと思うんですけど、それをした場合、その場で選手交代、即刻2軍行きでいいですよねっていうのは監督と僕の中では約束事としてやらせてもらっていた。僕はその時、監督にすぐ『もう、代えますよね』って言ったんですけど…」
林ヘッドは新庄監督との“約束”通りに清宮の途中交代、そこには次の日からの2軍降格というペナルティーの意味も含めて進言したが、新庄監督の反応は意外なものだった。
「監督はずっと黙っていて『ちょっと待て』ってなって。で、『次の打席、見たい』って。次の打席、幸太郎はタイムリーを打ったんですよ。で、そこから、そのまま使うってなって、まあ最後まで使ったんですよ。そうしたらその試合、勝ったんですよね」
新庄監督が林ヘッドとの“約束”を破ったのは、許されないミスでも、それを試合の中でどう取り返すか見たかったからだった。清宮はミスを取り返し、勝利へとつながる名誉挽回の仕事をしてくれた。
ただ、首脳陣の間では、これまでの采配とつじつまが合わないことで納得のいかない感情も湧き出ていたという。林ヘッドも、その1人だったが、翌日に指揮官も参加するコーチミーティングの中でモヤモヤは解消されたという。
「次の日のミーティングの時に、やっぱ各担当コーチがいろんな思いをそのミーティングで話をしたんですよ。幸太郎に対して。各担当コーチが話してくれたとことで、そこでチームが1つになったというか、ああなんかすごくいいチームになったと思いましたね。それまでもずっとできていたんですけど、そこでひとつみんなが近くなった。選手、コーチも含めて」
その試合からチームは6連勝をマークした。清宮もシーズン終盤へ向けて打撃の状態を上げた。新庄監督が林ヘッドとの“約束”を破った決断は、主軸になるべき男の成長とチームの2位躍進へとつながる大きな出来事となった。