慶大・広池浩成投手(2年=慶応)はプロ野球選手になりたいと夢見る。
NPB12球団のスカウトや編成担当者から高い評価をされれば、夢はかなう。その1人が父浩司さん(51)だ。現在は西武球団の副本部長。来年1月には本部長に着任する。意思決定の中枢にいる。
周りからはきっと“親子”でみられる。それも悟っている。周囲の思いは、自分では決してコントロールできないこと。世の反応を悟りながらも、揺れず、ただ己を貫くだけだ。
「仕事で評価してほしいです。親子の評価じゃなく、プロの仕事としての評価をしてほしいです」
この先の2年間次第では「プロは無理」という判断をされるかもしれない。
「はい、もちろん。それも分かっています」
秋のリーグ戦後には、この寒い季節にもかかわらず153キロを投げ込んだ。「アベレージでも149キロ出た日もありました」。現在は大学2年生。その投げっぷりで26年のドラフト戦線に名乗り上げる資格を十分に秘めている。
春の開幕前に「6大学で圧倒できる投手になりたい」と目標を掲げ、実際にはリーグ戦で酸いも甘いも味わった。言葉は少し変わったけれど、目指す本質に変化はない。
「打者を制圧できる投手になりたいです。プロに行けるかどうかとなると、そこを求められると思うんです。三振、内野フライ、内野ゴロ。たまたま抑えるんじゃなくて、完全アウトの制圧的な投球を増やしていくことがすごく大事だと思うんです」
何をもって“制圧”か。たまたま父の所属する球団だったものの、3人の投手の名前を挙げた。
「高橋光成さん、今井さん、平良さん。特にこの3人はすごく参考にしています」と目を輝かせた。
「それぞれタイプは違うと思うんですけれど、高橋光成さんはどの球を投げるにしても体の出力がすごいと思います。今井さんは力感のないところからすごく強い球ですよね。スライダーもすごいし。平良さんもあの球種の使い方で制圧していて。皆さんそれぞれにすごいです」
3人はそれぞれ四球を出す場面もある。もちろん広池も。ただ“制圧”を目指すためにそこは過度には気にしていない。「四球って(走者は)1進じゃないですか。1打者で2進にならないので。四球は走者を押し込むだけだと思っています」。割り切りながら、自身の長所を伸ばすことにより意識を置いている。
22日、慶大は24年の練習納めを横浜市内のグラウンドで行った。もうすぐ慶大野球部での前半2年間が終わる。
「ドラフト1位でプロへ、っていう夢があります。そこに向けての準備の2年間、という感想です。でも4年生で完成っていうわけじゃないので。ずっと成長していきたいです」
春先、瞳の奥に少し揺らぎが見えた。今はもう、堂々と夢への道筋を表現できる20歳だ。【金子真仁】