日本高野連は13日、来春行われる第97回選抜高校野球大会(25年3月18日開幕、甲子園)の21世紀枠の地区候補9校を発表した。九州からは玄界灘に浮かぶ離島にある壱岐(長崎)が選出された。東北からはNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台から久慈(岩手)、関東の横浜清陵(横浜)や近畿の山城(京都)とともに21世紀枠選出を目指す。年明け1月24日の選考委員会で9校が比較検討され、センバツ出場の2校が決定する。
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博多から高速船で約1時間。風光明媚(めいび)で麦焼酎発祥の地とされる人口約2万4000人の離島から、球児たちが夢舞台へ近づいた。9地区の選考では、創立266年で小倉藩校の流れを組む福岡県立の伝統校、育徳館との一騎打ちに。だが、地理的なハンディ克服。部員全員が壱岐島出身、秋季大会成績、文武両道やボランティア活動などの理由から、満場一致で選出された。
吉報を知らされた就任5年目の坂本徹監督(40)は「評価していただきうれしいし、感謝しています」と安堵(あんど)した。今後については「やるべき事は変わらず、やってきたことを意識して地に足をつけて頑張っていきたい」と気持ちを引き締めた。
困難を克服してきた。島外への遠征はフェリーと車が必要になる。年間約20回の遠征では約600万円の経費負担が必要。そんなハンディも、保護者や学校、地域関係者の支えもあって、主将のエース右腕、浦上脩吾投手(2年)を軸に一丸で乗り越えて来た。
部員25人(マネジャー4人)全員が島の中学軟式野球部出身。ただ、浦上が在籍した郷ノ浦中は22年の九州中学選抜大会の王者で、さらに1年生世代は壱岐市選抜として23年の離島甲子園で優勝している。例年、県外の高校に進学する生徒も多い中で、今年は1909年の学校創立から「100年に1度の奇跡」と言われるチームに育った。
創部48年目で初挑戦だった秋の九州大会は準々決勝で準優勝したエナジックスポーツ(沖縄)に敗れたが、1回戦では熊本王者の専大熊本玉名に競り勝った。確かな実力がある「壱岐っ子」たちが聖地に1歩前進した。【菊川光一】
◆壱岐(いき) 1909年(明42)年創立の長崎県立の男女共学校。学科は普通コース、東アジア歴史・中国語コース。生徒数415人(女子211人)。野球部創部は1976年。部員25人(女子マネジャー4人)。今秋県大会準優勝。春夏通じて甲子園出場なし。主な卒業生は下條雄太郎(ボートレーサー)、北島武(バレーボール・堺監督)ら。所在地は長崎県壱岐市郷ノ浦町片原触88番地。桑原鉄次校長。