独立リーグのBC・神奈川は4日、藤沢市内で新入団選手発表会見を行った。
新加入選手は練習生含めて14人。東都大学リーグ2部の駒大で、下級生から主戦投手だった最速150キロ右腕の松村青(じょう)投手(22)ら新戦力をそろえ、チームはリーグ連覇を目指す。
「野球をやめようかなとも思った」と胸の内を明かした182センチ右腕は地元神奈川から、もう1度夢を追いかける。
向上(神奈川)から駒大に進学し、1年春にリーグ戦デビュー。2年秋の専大との入れ替え戦では、2学年上の現ロッテ菊地吏玖、1学年上の現ヤクルト西舘昂汰との投げ合いを制して2勝を挙げ1部残留に貢献した。3年春のリーグ戦では10試合43回1/3を投げて防御率2・70。23年のドラフト1位がズラリと並んだ戦国東都で現阪神の下村海翔、現西武の武内夏暉らとしのぎを削った。だが公式戦の登板は3年秋のリーグ戦が最後。最終学年は登板0に終わった。
一体なにがあったのか。
ケガではなく、「調子を崩してしまって…。野球を辞めようかなとかも思ったんですけど」。キャリアハイの成績を残したあとに覚え始めた、違和感を振り返った。
23年の春。当時3年生だった松村はのちにNPB入りする好投手と毎週のように対戦した。息の詰まる戦いで投げる中で、大いに刺激を受けた。「なんか新しいことを始めようとしてフォームを変えたときに、ちょっとおかしくなってしまって…」。向上心が空回りした。
松村は振り子のように足を上げる独特のフォームが特徴。変化を取り入れつつも、3年春の段階では新しい取り組みはまだ身にしみこんでいなかった。しかし夏以降、試行錯誤するうちに本来の自分がわからなくなっていった。最速150キロで安定して140キロ台後半出ていた球速は、130キロ台までに低下。「(前監督の)大倉監督はメンバーに入れてくれたんですけど、もう他の人を投げさせた方が良いんじゃないか」とチームの勝利を最優先に考え、消極的になるほどだった。
迎えた最終学年。大半のチームメートと同じように社会人野球でのプレーも考えたが、3年秋から公式戦の登板がなかったこともあり、その道は険しかった。「もう意地で。最終戦だけでもいいからメンバーに入りたい」と新たなフォームで試し続け、絶不調だった130キロ台から10キロ以上は戻り、東洋大との最終戦では約1年ぶりに悲願のベンチ入り。登板機会はなかったが「ある程度スタート地点には戻ってきたのかな」と必死の思いが実を結んだ。
体は元気だ。「やっぱり諦めきれない」とNPB入りを目指す22歳の表情は明るい。駒大・香田誉士史監督(53)に相談し、当初は独立リーグ挑戦を反対されたが最後は背中を押してもらった。現在は「オーソドックスなフォームになりました」と心機一転。良い感覚も取り戻しつつある。「1年目からケガなく信頼してもらえるように」と、戦国東都の代名詞である入れ替え戦で投げた経験は大きな武器だ。
強みは「誰にも人見知りをしないところ」。会見終わりの記念撮影では、熱狂的なBC・神奈川ファンから直接エールをもらい満面の笑みを見せていた。「ぜひぜひ取り上げてください、またよろしくお願いします!」と声を弾ませる愛されキャラが、地元を盛り上げ、再出発する。