ドジャース大谷翔平が2年連続3度目のMVPを獲得した理由は「スイングスピードの速さ」と「芯で捉えるバットコントロールの正確性」の両立にあった。
平均スイングスピードはメジャー全体で8位で、芯で捉えるスクエアアップ率も同34位。両立しにくい2つの数値が、高次元で組み合わさっていた。これがリーグ最多の54本塁打を放ちながら、リーグ2位の打率3割1分を残した秘訣(ひけつ)だった。
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パワーとスピードを象徴する歴史的な「50本塁打&50盗塁」で忘れられがちだが、大谷は打率2位、出塁率1位と確実性や出塁能力も出色だった。MLBは今季からスタットキャストで選手のスイングスピードなどを公開。大谷のスイングを分析する。
バットの先端から6インチ(約15・2センチ)付近で計測し、ハーフスイングなど下位10%などを除外した平均スイングスピードは76・3マイル(122・8キロ)で、両リーグで8位(500スイング以上の268人が対象)だった。1位はスタントン(ヤンキース)で81・3マイル(130・8キロ)。以下オニール(パイレーツ)シュワバー(フィリーズ)ジャッジ(ヤンキース)アデル(エンゼルス)と続く。ジャッジを除くと、ブンブン振り回す低打率の打者が並ぶ。
大谷の真骨頂は、投球をバットの芯で捉えた指標となる「スクエアアップ率」にある。スイングスピードと球速から求められる理論上の最大値の80%を超えると、スクエアアップとなる。データ上、バットの先端から4~9インチ(10・1~22・9センチ)の芯付近(根元や先端以外)に当てると、スクエアアップを出しやすい。両リーグ最高はナ・リーグ首位打者アラエス(パドレス)の46・5%。大谷は37・3%で両リーグ34位となる。
こちらのランキングは、スイングスピードの遅い打者が上位に並ぶ。1位のアラエスは63・2マイル(101・7キロ)で、何と最下位の268位。42・3%で2位パーキンス(ブルワーズ)は69・4キロ(111・7キロ)で221位、41・9%で3位のクワン(ガーディアンズ)は64・4マイル(103・6キロ)で266位。いいか悪いかではなく、一般的に芯でボールを捉える確率が高い打者は、スイングスピードが遅い打者が多い。
スイングスピードのリーグ平均は71・5マイル(115・1キロ)で、75マイル(120・7キロ)を超えると「高速スイング」と定義される。平均が75マイル以上の打者は26人いるが、スクエアアップ率が35%を超えた打者は、大谷(37・3%)と39・5%のソト(ヤンキース)だけ。いかに両立が難しいかが分かる。
速いスイングスピードかつ、バットの芯で捉えた(スクエアアップ)打球を「ブラスト」という。スイングスピード(マイル)とスクエアアップ率(%)の合計が164を超えるとブラストになる。大谷のブラスト数は223本で両リーグ1位。MLBでは筋肉増強剤がまん延していた01年以来となる400塁打を達成したが、誰よりも強く正確に捉えた結果と言えそうだ。【斎藤直樹】